FTA(自由貿易地域)の締結は世界貿易の拡大に貢献しているのか?

Voxより
 
What do gravity models tell us about PTAs impact on trade flows: More creation or more diversion?
(http://www.voxeu.org/index.php?q=node/614)
 
WTO(世界貿易機関)による多角的貿易自由化交渉(ドーハラウンド)が暗礁に乗り上げている中、世界の多くの地域でFTA(自由貿易協定)が結ばれている。
FTA(PTA:Preferential trading area (特恵貿易地域)ともよばれる)は、ある特定地域内の国々、もしくは2国間の間で貿易自由化を行う協定であり、代表的なものはEU(欧州連合)であったり、NAFTA(北米自由貿易協定)やMERCOSUR(南米共同市場)などがある。
 
今回のブログ記事は、これら自由貿易協定が世界貿易の拡大に貢献しているのかという問題に関する研究について述べられている。
自由貿易協定は、協定を結んだ国々の間の貿易障壁を取り払うために、域内の貿易を促進する効果を持つ。これを貿易創出効果とよぶ。
その一方で、それまで協定を結んでいない国から輸入していた製品は、協定を結んだ国からの輸入に切り替わる可能性がある。これは、協定を結んだ国からの輸入に対する貿易障壁がなくなるために、協定を結んでいない国からより輸入しやすくなるからである。これを貿易転換効果という。
 
貿易創出効果は、貿易の拡大につながるのに対し、貿易転換効果は貿易の拡大を弱める効果を持つ。このため、この両者の効果のどちらが強いのかが注目されてきた。
 
オーストラリアのAdamsらの研究によると、計量分析によって、貿易創出効果と貿易転換効果を比較したところ、貿易転換効果が貿易創出効果を上回るために、FTAの締結は世界貿易の拡大に悪影響を持つという研究結果が得られた。
それに対し、このブログでは最近行われたDeRosaやHufbauer and Schottの研究では、より詳細なデータを用いて分析した結果、貿易創出効果のほうが貿易転換効果を上回り、FTAは域内貿易の拡大だけでなく、域外との貿易の拡大も生み出すことを指摘した。
ただし、EUNAFTAといった大規模なものではない小規模のFTAや、農業や繊維製品に関しては貿易転換効果による貿易の縮小の効果のほうが大きいらしい。
 
このことより、このブログ記事では、WTOの貿易自由化交渉が停滞する中、世界貿易の拡大に対するFTAの貢献は大きいものがあると結論付けているわけだ。
 
これは、WTOで一気に世界規模の貿易自由化をやらなくても、貿易自由化に合意できる国同士でFTAをどんどん結んでいけば最終的には世界規模の貿易自由化が実現するという考えを支持するものであるが、実際に必ずしもそうなるとは限らない。
今は、まだ順調にFTAの拡大が進んでいるとしても、世界経済に大きな影響を与えるようないくつかの大規模なFTAに集約されていくと、大規模なFTA圏同士が争いはじめ、戦前のブロック経済化と同じようになってしまって貿易戦争に発展する可能性もあるとは考えられないだろうか。
もしくは、FTAをどんどん拡大する事によって自由貿易の恩恵に被る国がいる一方で、それに取り残された国々はどうなるのだろうか。
日本だって、FTAに関しては欧米の国々から見るとはるかに遅れているのである。欧州や、北米・南米、そしてASEAN地域など大きなFTAがどんどんできている中で、もし日本だけ取り残されたら一体どうなるのだろうか?
 
いずれにせよ、今後しばらくはFTAがどんどん増えていきそうな状況なので、この手の研究もまだまだ発展しそうでしょうね。僕は計量分析は苦手なのでパスします、はは。。。
 
今日はこの辺で
 
今日の一枚

黒船

黒船

最近木村カエラを迎えて2度目の再結成をやりましたが、元は70年代のバンドのサディスティック・ミカ・バンドです。
加藤和彦をリーダーに、高中正義、高橋幸弘といった後のビッグアーティストが加入していた伝説のバンドです、
その最高傑作がこの「黒船」です。これは、クリス・トーマスというイギリスの名プロデューサーによってプロデュースされたもので、その音楽のクオリティは今でも全然色あせないです。
また、幕末の日本をテーマにした世界観は加藤和彦独特の面白い雰囲気で、それがただの演奏の良いアルバムでは収まらない強烈な個性をかもし出しています。
1曲目の「墨絵の国へ」から6曲目の「黒船(嘉永六年六月四日) 」までの流れはまさにトータルアルバムにふさわしいもので、70年代の日本でこんなクオリティの高いアルバムが作れたということにほんと驚きます。
3曲目の「タイムマシンにお願い」は最近キリンのCMでかかっていましたね。
また、7曲目「よろしくどうぞ」からはレコードでいうB面なんですが、これも「どんたく」や「塀までひとっとび」(僕はこの曲が一番好き!)そして「颱風歌」といった曲はかっこいいです。
日本のロックを語るなら聞き逃せないアルバムです。