外国企業が進出するための条件

  
今日は少し根本的なことを書きたい。
 
途上国の経済政策の目的は国民所得の増大であり、経済発展であるということは言うまでもないだろう。
経済発展とは国における生産力の増強を意味する。生産力の増強とはほとんどの場合工業化を意味する。インドのようにIT産業を中心に経済発展を進めるのは稀なケースである。
では、工業化に必要なものとはなんだろうか?
資源、資本(資金)、人的資本、技術などがあげられるだろう。
問題は、これら工業化に必要な要素をどこから得ることができるのかということである。
 
先進国ならば、潤沢な資金が国内に貯蓄されているし、教育によって質の高い労働者を得ることができ、技術も企業や大学など公的な研究機関に蓄積されているだろう。
しかし、途上国はこれらの要素の多くを外国から導入しなければならない。人的資本は自国の教育制度を整えることで質を高めるしかないが、資本や技術などは外国から導入しなければならない。
外国から資本を導入する手段としては、援助や外国企業からの直接投資の受け入れや外国銀行からの借入があるだろう。
また、技術の導入手段としては、外国からの技術者の招集や、外国企業からのライセンス購入、さらには外国企業の直接投資の受け入れがあるだろう。
 
これら様々な手段の中で、一番重要なのは外国企業の直接投資の受け入れである。直接投資とは単なるお金だけの投資ではなく、企業の生産拠点の設置のための投資であり、直接投資を受け入れることで、受入国はその企業が持つ経営ノウハウや技術、ブランド力を含んだ経営資源を自国に導入することができるわけである。
この外国資本の直接投資を積極的に受け入れることで経済発展を遂げてきた国が、タイやマレーシアといったASEAN先発国であり、最近なら中国が上げられるだろう。
 
では、外国企業がその国に直接投資を行うために必要な条件とはなんだろうか??
 
まず、上げられるのは、その国の政情である。政治が安定しているのか、外国資本に対して排他的な姿勢をとっていないだろうか、政策がころころ変わるようなことはないだろうか、などである。
次に、その国のインフラがどれくらい整っているかである。電力や交通・通信インフラが整備されていない国に進出しても、工場運営のコストがかかってしまい、進出しても苦労するだけである。
次に上げられるのは、国民の教育水準である。文字も読めない、簡単な計算もできないような国民ばかりだと、進出しても彼らに仕事を教えることができないし、信頼して仕事を任せることはできないだろう。
マクロ経済環境もしっかりしていなければならない。財政政策や金融政策といったマクロ政策が適切に行われていないと、為替レートが安定せず、その結果為替レートが急落なんかしてしまうと、その国で稼いだ収益が大きく目減りしてしまうことになる。
 
ここまでは、直接投資を受け入れる国の基本的な経済環境についてのことである。
この他には、輸出向けの直接投資なら低賃金の労働者がどれだけその国にいるのかということであったり、現地市場向けの直接投資ならその国の市場が今後どれだけ拡大するかなどがあげられる。
 
東アジアや東南アジアが戦後経済発展を遂げることができた要因には、教育水準が高かった事に加えて、マクロ経済政策が適切であったこと、そして日本の経済援助を中心に経済インフラが整備されたことがあげられる。
そこら辺の分析の代表的なものが世界銀行が出した「東アジアの奇跡」だろう。

東アジアの奇跡―経済成長と政府の役割

東アジアの奇跡―経済成長と政府の役割

 
GMSは経済インフラの整備という意味で、インドシナ地域の経済発展に大いに貢献するだろう。しかし、それだけで何もかもうまくいくわけでない。インフラが整備されても、経済発展を満たす条件をその国が満たせなかったら、その国の工業化は進まず、道路の上を先進国やASEAN先発国のトラックが通り過ぎるだけである。
 
今日はこの辺で
 
今日の一枚
Nothing Like the Sun

Nothing Like the Sun

 
僕は基本的にアメリカの音楽よりイギリスの音楽の方が好きです。
特に1980年代後半から90年代前半にかけてのイギリスの音楽が今でもお気に入りで、スティングもそんなアーティストの一人です。
今回紹介するアルバムは、そのスティングがソロになって2枚目のアルバムです。スティングはポリスという3ピースバンドでベース&ボーカルを担当していたのですが、ポリス解散後、ジャズミュージシャンを中心とする様々なミュージシャン達と共演していきました。
このアルバムは、バンド解散後、自分の音楽の幅を広げようとするスティングの意欲が溢れている作品で、クオリティの高い曲が多いです。
特にサックスの音色がいいんですよね。オープニングの「ザ・ラザラス・ハート」、「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」、「孤独なダンス」、「シスター・ムーン」あたりは曲もいいんですが、曲中に入ってくるサックスが心にしみます。
それに、ちょっとファンキーな「ウィル・ビー・トゥゲザー」が最高にいいですね。イントロのフレーズは頭から離れないですよ。

スティングは「ロック・ジャズ・ソウル・ファンク・レゲエなど色々な音楽の要素をすべて取り込んだ音楽がポップ・ミュージックだ」とインタビューで語っていたことがあるんですが、そういう考え方が僕も好きですね。様々なスタイルを取り込みながら自分の世界を作り上げているスティング、興味ある人は聞いてみてください。