開発援助と経常費用

　
経済産業研究所(RIETI)のディスカッションペーパーより
(http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/07100003.html#mainnavi)
　

要約
近年の実証研究によれば、開発援助が経済成長を促進するという明確な結論は得られていない。本稿は、開発援助が経済成長に結びつかない理由として、援助受入国の経常予算に対して、開発援助による投資が過剰である「援助の氾濫」に着目する。なぜならば、開発援助プロジェクトは、十分な経常費用が賄われているときに限って、持続的にその便益をもたらすからである。本稿では、援助受入国の経常予算の不足を補い、開発プロジェクトの要素投入バランスを是正する手段として、援助ドナーによる財政支援の効果を理論的に検討する。ドナーが、他ドナーのプロジェクトよりも自らのプロジェクトの成功を高く評価する「自己中心的」な選好を持っているとき、当該ドナーは財政支援を出し惜しみ、したがって援助の氾濫が発生することを示す。さらに、援助の氾濫はドナーが多くなればなるほど悪化する。

　
戦後、先進国から発展途上国に提供された経済援助の額は計り知れないものがある。にもかかわらず、アジア諸国を中心とした一部の国以外の貧困国の多くは貧困から脱出することができずにいる。
　
このような状況の中、近年開発援助の受け入れと経済成長に関する実証研究がなされている。
その研究の多くは、開発援助の受け入れが増加しても経済成長が促進されるとは限らないという結論を得ている。
それどころか、援助の受け入れが多くなり「援助の氾濫」のような状態になると経済成長にマイナスの影響が及ぼされるという研究さえある。
(援助氾濫と経済成長 :クロスカントリーデータによる分析　http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/07070005.html を参照)
　
このような「援助の氾濫」が発生する理由として、このディスカッションペーパーでは、援助受入国の開発プロジェクトの維持管理などに使われる経常費用の予算に対して、過剰な援助が行われていることがその原因だとし、途上国内における開発プロジェクトへの経常予算や外貨、専門家を援助国が奪い合うために、開発プロジェクトが効率的に実施されていないと考えられている。
本文に引用されているように、開発プロジェクトの維持管理の経常費用が不足する事によって「道路や公共施設は荒廃したままで，学校は教師や教材を欠き，保健や農業普及のための乗り物については予備の部品や燃料がない」状態が発生するのである。
　
この論文では、援助受入国が負担可能な経常費用に対して、多くの援助国が競って援助を行うことによって、各開発プロジェクトの維持に必要な経常費用が十分に供給されなくなるという、「援助の氾濫」が発生するメカニズムを経済理論モデルを用いて説明している。
このモデルの面白いところは、援助受入国の開発プロジェクトに投入する予算や専門家などを公共的資源と考え、「共有地の悲劇」の概念を用いて、援助の過剰供給を説明しているところである。
　
開発援助の受け入れが多くなるほど経済成長が実現できなくなるという論理は、一見逆説的だが、このように経済学的手法を用いてその説明が可能なのであるとすると、その改善策を編み出すことも可能となるだろう。その意味で、この研究は非常に興味深いものだと思える。
　
今日はこの辺で
　
今日の一枚

RIOT ON THE GRILL

　
エルレガーデンです。以前、最新作の「ELEVEN FIRE CRACKERS」を紹介しましたが(http://d.hatena.ne.jp/eisakukun/20070819)、これはその前のアルバムですね。
「ELEVEN FIRE CRACKERS」よりもこっちの方がポップで聞きやすいですよね。それでも、やはりラウドミュージックであることは変わりありませんが。
彼らの音楽のいいところは、ギターサウンドを前面に押し出しているところ、曲がメロディアスなところ、そして一曲一曲が短いところですね。ギターポップの王道を地で行っています。
英語の曲の言葉のノリのよさに加えて、日本語の曲についても日本人好みなメロディをうまくビートに載せているなあと聞いてて感心します。
このアルバムなら「Snake Fighting 」や「TV Maniacs」のようなギターリフでがんがん押していく曲もいいし、「Red Hot」や「BBQ Riot Song」のようなビートの勢いで押し切る曲なんかいいですよね。それに日本語の曲の「虹」や「モンスター」も歌いやすくて気持ちいいです。
ちなみに、このアルバムのジャケットも結構インパクトあるんですが、違うジャケットのバージョンもあるようで、僕は間違って2枚買う羽目になってしまいました、とほほ。