貿易政策がもたらす農産物市場の歪み

先日行われた洞爺湖サミットで、穀物輸出国に対する輸出規制政策の撤廃を促す首脳文書が採択された。

輸出規制政策が、国際価格の高騰を招くと共に、輸出国の農家に損害をもたらす政策だということは、このBlogで何度か書いたが(最近の穀物輸出国における輸出規制政策について, 輸出規制政策に端を発したアルゼンチンの混乱 (Newsweek6月25日号より))、輸出国の立場からみると、こう言いたくなるだろう。

「お前ら、今までは国内農業の保護だといって俺達の作った農作物を安く買い叩いていたくせに、何言ってんだよ」

最近の穀物価格高騰が起こる前まで、穀物の国際価格は非常に低価格だった。これは、日本を含む先進国諸国が食糧安全保障だとか言って外国の穀物の輸入に対して輸入障壁を設け、さらには農業保護によって国内農業が作りすぎた余剰農作物に輸出補助金をつけて世界に輸出していったことが原因である。
このような先進国の政策によって、穀物価格は低水準となり、多くの途上国の農業は打撃を受けてきたのである。

そんなことをしておきながら、いざ穀物価格が高騰したら、途上国よ出し渋りせず俺達に農作物を輸出しろというのは筋違いもはなはだしいだろう。

実際、最近までの穀物価格の低迷によって、途上国が農業生産を拡大しようというインセンティブは抑制されていたために、新興国の成長に伴う食糧需要の増大に生産が追いつかずに最近の穀物価格高騰の原因ともなっているのである。

このような農作物の貿易政策は、国際価格の変動を激しくする。
農作物の供給が豊富になると、先進国が国内農業の保護のために輸入障壁を設ける事によって、穀物の国際価格は低迷することになる一方で、農作物の供給が不足すると穀物輸出国が自国への食糧供給を維持するために輸出規制政策を行うために、穀物の国際価格は高騰する事になる。
このような貿易政策によって一番打撃を受けるのは実は農作物輸出国の農家である。これでは、農作物の生産拡大は望めない。

農作物の国際価格を安定させ、農作物の生産を拡大させるためには貿易の自由化が必要なのである。

今日はこの辺で