なぜ日本政府は事故米なんかを輸入したのか

自民党が無責任な総裁選をやっている間に湧き上がってきた、事故米の話題。

工業用として輸入したはずの事故米を食品会社に流した農水省に一番の問題があると思うのですが、この事故米は日本がWTOに課されたミニマムアクセス(輸入枠)を満たすために中国などから輸入してきたお米だそうです。

正直、事故米なんて言葉初めて聞いたし、食用じゃない米をわざわざ外国から輸入していたのもはじめて知りました。

この事件を受けて、一部コメンターなどからは、「なんでまともに食べることも出来ない米を政府は外国に買わされたのだ。こんなもの買うことはできないと突っ返せばよかったんだ!」なんて批判が出ています。でも、考えてみると、これは買わされたのではなく、政府が進んで買ったのではないかと思えてならない。

ミニマムアクセスと言うのは、日本が米の輸入に対して輸入が不可能なほどの高関税を課す代わりに、国内消費量の数%は外国から輸入してくださいねと義務付けられた輸入量のことです。政府は、輸入米が食用として国内に流通してしまうと米の価格が低下して米農家の生活を圧迫する事になるために、輸入米は備蓄用や、お菓子などの原料など食用米以外のルートで処分しています。

しかし、最近の米の国際価格の高騰は、日本政府は輸入の負担の増大をもたらしました。輸入枠は決まっていますから、価格が高くなったから買えませんでは済みません。とすると、少しでも価格の安い米を輸入しようとするでしょう。だとすれば、食用の米より、食用には使えない事故米を輸入すれば輸入に必要なお金を節約することが出来ると考えても不思議ではありません。

一方、米を輸出する側も、日本政府の輸入米が食用には流通しないことは知っていますから、おいしいお米を日本に輸出しようと必死になる必要はないわけです。他の国には売れない事故米を、他所よりも高い価格で買ってくれるのであれば喜んで日本に事故米を売ることでしょう。

結果として、日本は工業用原料として事故米を輸入したはいいけど、国内需要を上回るほど輸入しすぎてしまったために処分にコマって今回の事件へとつながったのではないかと思うのです。だとすれば、今回の事件も保護貿易の弊害なんだろうなあと思います。

実は、これと反対のことが昔アメリカで起こりました。

1980年代初頭、日本の自動車業界はアメリカに対して自動車の輸出自主規制を行いました。これは、日本からアメリカの自動車の輸出の急速な増加に対して日米貿易摩擦が発生し、これ以上アメリカに大量に輸出を続けたら日本の自動車に対する保護貿易政策が行われるとの懸念から、日本の政府が自動車業界に依頼し、それを自動車業界は受け入れたわけです。そこで、日本の自動車業界はどうしたのかというと、高価格で売れる大型の自動車の輸出を増加させたのです。なぜなら、輸出する数量が決まっているのであれば、少しでも価格の高い自動車を売る方が自動車会社にとって利益になるからです。
このため、米国内の自動車の価格は、日本の自動車業界が輸出自主規制を行う前より大幅に上昇する事になったのです。

これは、輸出する側が少しでも設けようと価格の高いものを売りつけたケース。今回のケースは、輸入枠が決められている日本政府が少しでも支出を減らそうとして質の悪い米を輸入したということで、本質的には同じ話だと思います。

今日はこの辺で