今日の一曲 Superfly「恋する瞳は美しい」

恋する瞳は美しい/やさしい気持ちで

恋する瞳は美しい/やさしい気持ちで

Superflyの新曲。かっこいいロックやね。9月にアルバムが出るそうなので楽しみです。

移民は受け入れ国の財政に貢献するのか?

Voxより

The fiscal effects of A8 migration to the UK

移民の受け入れの経済効果と言うと、自国民の労働者の賃金に与える影響など労働市場に関係するものが多いが、移民受け入れの経済効果を考える際のもう一つ大きなトピックに、タイトルにあるような受け入れ国の財政に与える影響がある。

一般に、移民の受け入れは、受け入れ国の財政状況に悪影響をもたらすものと考えられている。移民が得る賃金は自国民の労働者に比べて低いために移民から得られる税収はそれほど大きくない一方で、社会保障の支出などはかかると考えられているのがその理由だ。

しかし、今回紹介するブログ記事で紹介された論文では、移民の流入がイギリスの財政負担に悪影響を与えるどころか、イギリスの財政改善に貢献していることが示されている。

2004年3月に中東欧8カ国(チェコスロバキアエストニアラトビアリトアニアスロベニアポーランドハンガリー)がEUに加盟したときに、これらの国からの労働者の受け入れを多くの国が7年間先延ばししたのに対し、イギリス、アイルランドスウェーデンなどわずかな国が中東欧諸国からの労働者の受け入れを即座に認めました。

この措置によってイギリスにやってきた中東欧諸国の移民がイギリスの税収と社会保障支出にどのような影響を与えているのかがブログ内で紹介されている論文で分析されている。

その結果は、イギリスにやってきた移民は自分たちの納税額以上の社会保障を受けておらず、イギリス政府の財政を改善させる効果を持つことであった。

中東欧諸国からイギリスにやってきた移民は、イギリス国民に比べて比較的学歴が高い[大卒以上の学歴を持つ比率がイギリス国民が17.1%に対し、移民は35.5%]にもかかわらず、平均賃金はイギリス国民に比べて低い水準に甘んじている。しかし、若年層が多いことから労働力率及び就業率が高い[労働参加率はイギリス国民は78.9%に対し、移民は88.4%]ために、納税や社会保障の負担に大いに貢献している。

その一方で、移民のうちで社会保障などの公的支出による便益を受ける人の割合はイギリス国民に比べて低く、公営住宅に住んでいる人の比率も低いことから、移民が社会保障などの公的支出から得る便益は低いものとなっている。

このため、移民の存在はイギリスの財政改善に貢献している。移民は自分たちが得る財政支出の1.37倍の納税をしているのである(2008-09年)。

日本の財政赤字は今回の選挙の争点にもなっているが、その解決としても移民の受け入れを考えるべきと思われますね。

今日はこの辺で

 「CO2排出戦争(A Green Trade War)が始まった」

以前、アメリカの温暖化対策法に保護貿易的条項が入っていることを紹介したが(アメリカの環境保護主義)、先週号のNewsweekでは、環境対策に潜む保護主義の動きに関する記事があったので、紹介しておく。

NewsWeek 09年7・15号の記事より
 
CO2排出戦争が始まった
 
ポスト京都議定書をめぐる議論は貿易交渉並みに混乱を極めている。保護主義に走る各国の「わがまま」な主張の行方は?
 
(前略)
 
 先進国の政府は、自国企業が厳しい排出規制に従うことで製造コストの上昇に直面する一方、排出削減義務のない中国のライバル企業が勢いづくことを懸念している。米政界では既に、温暖化ガスの排出削減と中国からの輸入削減を結びつけて考える向きが増えている。
 アメリカでは、エネルギー集約型産業や労働組合、車用の鉄鋼業地帯の利益を代表する議員が特別な保護を要求。オバマと米議会が構想している排出権取引制度が導入されれば、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い企業は排出権の購入が義務付けられる。同様の制度のない国々に拠点を置くライバル企業に比べて米企業が不利になると、産業保護派は主張する。
 いい例がアルミニウム製錬や肥料製造といったエネルギー集約型産業。こうした業界はCO2排出権を買わなくてはならない。そのため製造コストがかさみ、競争力を失いかねないというのだ。
 スティーブン・チュー米エネルギー長官は3月、中国のような国に温暖化ガスの排出削減を求めるために輸入関税を武器として使う用意があると語った。
 これに対し、気候変動対策に携わる中国当局者のスー・ウェイは報復を辞さない構えを見せたインドも、先進国が温暖化対策をめぐって保護主義に走らないよう求めている。 これまでのところ、実際に保護主義的な措置が講じられたことはないが、今後どうなるかは分からない。
 アメリカが考えている温暖化防止の枠組みはヨーロッパの枠組みに似ている。鉄鋼、アルミニウム、セメントのような国内のエネルギー集約型産業には大きな排出枠を与え、事実上、適用除外という格好になるだろう。大統領は、排出削減措置によって米企業が不利にならないよう輸入関税を設ける権限を持つことになる可能性が高い。だが権限を行使できるのは、5年の試験期間後に米企業が不利益を被っていることが明らかになってからのことだ。
 アメリカでの温暖化問題の議論では、雇用と競争力に関する不安の比重が高まっており、今後も産業保護を求める声は減らないだろう。一方、ヨーロッパの政治家は、中国とアメリカが温暖化ガスの排出削減に同意しなければ、貿易制裁を科すべきだと考えている。 こうした保護主義的な姿勢はCOP15の妨げになる恐れがある。。。。
 
(中略)
 
 保護主義的な主張は温暖化防止に向けた努力を損なうのはもちろんのこと、事実にも反している。アメリカが輸入する「炭素集約型」製品で最大の割合を占めるのは中国製ではなくヨーロッパ製だ。環境規制が競争力に与える影響がそれほど大きくないことも、多くの研究で明らかにされている。
 EUは05年に、政府がCO2などの排出枠を企業に設定する「キャップ・アンド・トレード方式」による排出権取引システムを導入した。だが国際エネルギー機関(IEA)によれば、域内の重工業の競争力に影響は出ていない。
 09年5月のピュー気候変動センター(ワシントン)の試算によれば、12年までに1トンのCO2ごとに15ドルの負担を強いられることになっても、脅威にさらされる製造業の雇用は最大0.2%だ。企業が進出先を決定する際、環境規制はほとんど、あるいはまったく考慮されないとの調査結果もある。最も重視されるのは市場へのアクセスで、その次は人件費だ。
 ドイツの化学産業のように、環境規制をクリアするための効率化が、競争力の強化につながったケースもある。
 
(後略)

今日の一枚 The Hiatus 「Trash We'd Love」

Trash We’d Love

Trash We’d Love

Ellegarden細美武士の新バンドのファーストアルバム。

Ellegardenはギターサウンドでゴリゴリ押すサウンドだったけど、ピアノが入ったこととドラマーが変わったことで、非常にドラマチックでアーチスティックなサウンドになったんじゃないかと思います。
ポール・ウェラーがジャムからスタイルカウンシルへと変わったように、スティングがポリスからソロに変わったように、新しいサウンドをどん欲に追及しようという求道心が見えるアルバムだなあという気がしました。最近のアーチストでは珍しいんじゃないかな。
ただ、その分Ellegardenのころにあったポップさが弱くなった気もします。少し重いってことやね。

1曲目のGhost in the Rainと8曲目のThe Flareの動画があったんで貼っておきます。発売前にThe Flareの動画を見てすごいショックを受けたんだけど、てっきりこれがオープニングの曲かと思ってたんで8曲目という中途半端な位置で少し残念。


 ヨーロッパのフレキシキュリティの実態

国立国会図書館 レファレンスNo.700より

フレクシキュリティ〜EU社会政策の現状

去年の1月に東洋経済で紹介されて、このブログでも取り上げた北欧諸国の労働市場政策の特徴を示すフレクシキュリティに関する論文です。

要旨を転載しておきます。

  1. 近年、日本の雇用政策の参考として注目されているのは、2007 年にEU の「共通原則」となった雇用政策、フレキシキュリティ“flexicurity” である。これは、労働市場の柔軟さ“flexibility” と労働者保護“security” を両立させた政策で、柔軟で信頼性の高い労働契約、包括的な生涯教育戦略、効果的な積極的労働市場政策、現代的な社会保障制度、の4 要素がまとめられている政策体系である。
  2. この政策が成功し、労働者の転職が容易で実際に労働移動が多いが、労働者の生活が安定している国としてデンマークとオランダがあげられている。デンマークは、社会福祉が充実し、長い成人教育の伝統を持つ国である。1990 年代前半に高失業を克服する為に、失業保険受給期間の短期化、長期失業者への職業訓練、教育訓練の改善など、失業者を就労に誘導するための制度改革を次々と行い、現在は、生活の安定感を持ちながらも転職や創業も活発な、活力ある労働市場が実現している。デンマークの手厚い失業時所得保障と、女性の就労保障でもある保育に始まる多様で充実した教育、その延長線上にある成人教育、職業訓練が功を奏したものと思われる。
  3. オランダは、1960 年代の好況期に急速に福祉を充実させたが、その後の景気停滞の中で、1980 年代前半には財政・雇用危機に陥った。この時に、労働側は賃金の抑制、使用者側は雇用維持と労働時間の短縮、政府は財政支出の抑制と減税に、それぞれ努めるという政労使合意がなされた。それまでのオランダは、雇用政策も教育政策も自由主義的であり、かつ性別分業型の社会であったが、不況以降、パートタイム労働を利用しての女性の労働市場進出が進み、90 年代に入ると、平等法制、職業訓練、保育保障などの公的施策の整備・拡大が行われてきた。
  4. モデルとされる上記2 か国、更に他のEU 主要国での政策形成、政策への公費支出の推移、労使の役割などを検証すると、フレキシキュリティ政策とは、所得保障を通じて労働者の生活の安定を図ったうえで、個々人の能力開発を支援して柔軟で活力ある雇用につなげるという、雇用政策と教育政策の組み合わせであることがわかる。また、こうしたフレキシキュリティ政策の前提となるのは、女性の就労支援から始まった労働者の生活と職業との両立支援の制度であり、多様な生活・就業形態の個々の労働者の平等を保障する法制度である。

 アメリカの環境保護主義

The New York Timesの記事

Obama Opposes Trade Sanctions in Climate Bill より

The House bill contains a provision, inserted in the middle of the night before the vote Friday, that requires the president, starting in 2020, to impose a “border adjustment” — or tariff — on certain goods from countries that do not act to limit their global warming emissions. The president can waive the tariffs only if he receives explicit permission from Congress.

先日、はじめて温暖化対策法案が通ったアメリカですが、その中に、2020年以降地球温暖化対策を行わない国からの輸入品に対して輸入関税を課す条項が入り込んでいたようです。

理由は、地球温暖化対策によるアメリカのエネルギー集約産業の競争力を維持するためらしいですが、こういう条項を環境にこぎつけた保護主義と言うんですよね。

クルーグマンもこの条項を支持しているそうですが、中国をはじめとする途上国からの反発は必至でしょうから危険な話だと思いますね。