安全基準と国際競争力

 
先日、台湾産のうなぎを宮崎産と偽装した業者がいたというニュースについて書きました。
この事件の背景には、最近の中国産製品に対する安全面への不安から、国産品に対する需要が急増したことがあったのですが、「食」の安全について、10月1日付けの日経で興味深いコラムがあったので紹介しておきます。
 

気がつけばEU基準〜崩れる日本の「食」安全神話 (10月1日付け日本経済新聞 経営の視点より)
 
 食卓を預かる主婦が食材の「産地」に目を凝らす。国産なら安心。中国産なら手を引く。夕刻のスーパーでよく見かける光景だ。
 ならば厳しい基準を満たす国産品は安全で、管理が甘い外国産は危ないのか。ことはそう単純ではない。東南アジア諸国連合(ASEAN)の一角で、背筋が寒くなる話を聞いた。
 「日本は残り物の市場。食のゴミ箱と呼ぶ人もいる」。発言の主は食品加工会社の経営者。日本に冷凍エビを輸出している。「日本人は誤解しているようだが、日本の安全基準は国際的に見て極めて甘い」
 この地元企業は、厳格に検査した品を欧州連合(EU)と米国市場に回し、それ以外を日本に売るのだという。日本の消費者が描く「安全な国ニッポン」。アジアの目に写る日本市場の姿は、その美しい自画像とは似ても似つかない。
 一例を挙げよう。醤油などに含まれる「3-MCPD」という化学物質がある。一部の専門家が発がん性の疑いを指摘したのを受け、真っ先に含有量の規制策を打ち出したのはEUだった。
 日本では、まだ醤油業界が自主的に1PPMという目安を設けているだけ。EUが法的に定めた0.02PPMに比べて、二桁もハードルが低い。アジア企業は日本だけでなく欧米にも顧客を抱える以上、厳しいEU基準を満たす努力をするほかない。
 ASEANに工場進出したものの、EU準拠の審査に合格できずに悩む日本の食品会社がある。日本には輸出できても、欧米市場ではEU基準に鍛えられたアジア企業に歯が立たないという。笑えない話だ。
 マレーシアやタイは、EUの指導の下で食品安全の国内法規を厳格化し始めている。EUと同等の水準を目指す政策こそ世界で自国産品の信用を高める近道だと判断したからだ。ふと東アジアを見回せば、域内の基準制度はEU方式が席巻している現実に気づく。
 
(中略)
 株や為替の相場に似て、食品の競争力は信用という消費者心理に大きく左右される。「安全性」とは科学的な正当性だけで決まる単純な代物ではない。たとえ必要以上の基準でも、厳しい制度に基づく商品の信用が高まるのは当然だろう。
 スーパーの風景を見る限り、食品では国産品が信用の獲得競争に勝ったかのように見える。だが、それは日本国内だけで通用する甘い幻想ではないのか。
 自由貿易協定(FTA)ばかりが経済外交ではない。「残飯市場」の汚名を返上し、日本企業が活動しやすい舞台を世界でどう築くか。基準制度の陣取り競争に打ち勝つ知恵と腕力−。新政権の舵取りに企業は目を凝らしている。

 
この記事は食品の話だが、水産物にも当然当てはまることだと思う。
この記事にはEU域内の食品企業のことは書いていなかったが、当然EU域内の食品企業はこれらの厳しい規準を遵守する事によって競争力を保っているのだろう。
政府が安全に関して基準作るというリーダーシップを発揮する事によって域内の企業の競争力向上だけでなく、域外からの輸入品の品質向上まで実現する様は日本では考えられないことのような気がします。
ちなみに、先日紹介した台湾産を偽装した宮崎の業者は農水省から「厳重注意」を喰らっただけで済み、厳罰は与えられなかったそうです。
こんなことで日本の水産業大丈夫なのかなあ。
 
今日はこの辺で
 

CLOVER

CLOVER

 
スガシカオのデビュー盤です。大学院生の頃に初めて聞いたのですが、すんごいショックを受けました。
ファンク張りのサウンドも良かったのですが、やはりスガシカオといえば歌詞ですよね。
僕はあまり音楽に歌詞の良さを求めない方なのですが、スガシカオの歌詞は胸に来ます。なんというか、男の弱っちいところや、ずるいところなど上っ面じゃない心の奥底を描いているところが良いです。
このアルバムでも、「ドキドキしちゃう」なんか初めて聞いた時、こんな歌詞ありかってショック受けたし、「イジメテミタイ」なんて腰抜かしましたよ。ここまでダイレクトに歌っちゃいますか????って感じで。
とは言え、一番好きなのはやはり「月とナイフ」そして「黄金の月」ですね。
「月とナイフ」は今聞いても涙が出ちゃいます、男心をくすぐります。
それと「黄金の月」も涙出ますね。生きていく中で自分の心の中に根付いてしまう「自分はこんなものさ」というやりきれなさを背負いながら生きていく姿が現われていて胸にジーンと来ます。
まだ聴いたことのない人は一度聞いてみてください。