世界金融危機がアジア経済に及ぼす影響は

みずほリポート 2009年4月6日発行

世界金融危機とアジア〜資本フロー・貿易の縮小を通じた影響と各国・地域の政策対応

今回の世界金融危機がアジア経済に及ぼす影響について、113ページにも及ぶ精力的なレポートがまとめられていた。

世界金融危機は国際資本移動と貿易の流れを通じて新興国に影響を与えるが、資本フローと貿易の両面からアジアの主要国に対して詳細な分析がなされており、とても参考になった。

要旨から主要なところを抜き出しておく。

1 米国のサブプライム問題に端を発する世界金融危機が深刻さを増すにつれ、アジア諸国・地域も急激な資本流出、通貨・株価の急落に見舞われ、経済成長にもブレーキがかかっている。世界金融危機の影響のアジアへの波及経路として、主に2通りが挙げられる。
 
2 第一は国際資本フローを通じた影響の波及である。世界金融危機により国際マネーが安全性、流動性を求めて逆流したことで、相対的に信用力の低い新興国は国際金融資本市場における顕著な資金調達難と急激な資本流出に直面した。アジア諸国・地域は、欧州新興国のように大幅な対外不均衡を抱えていなかったため、国際収支危機には陥っていないが、近年、海外資金への依存度を高めていた韓国、インドのような国は、他国を大幅に上回る通貨の急落、外貨準備の減少を余儀なくされた。また、信用不安の高まりや自国通貨買いの為替市場介入の影響などにより、全般的に流動性はタイトとなり、市場金利の高止まりや貸出鈍化などの金融環境悪化が経済活動の足枷となりつつある。
 
3 第二に国際貿易取引を通じた影響の波及が挙げられる。リーマンショック以後の世界的な需要縮小に伴い、アジア諸国・地域の輸出は軒並み落ち込んだ。特に、世界景気の影響を強く受ける電子部品・電気機械、化学・鉄鋼製品の中間財などの品目を多く輸出しているNIEs諸国・地域や一部のASEAN諸国は激しい輸出の落ち込みに見舞われている。一方、中国やインドネシアの輸出は相対的に世界景気の変動による影響を受けにくいが、急激な世界需要の縮小に直面し、両国とも輸出の急減速を強いられている。
 
(以下略)