着実に浸透していく保護主義

Vox EUより

Trade protection: Incipient but worrisome trends

このブログでも何度も指摘しているが、去年11月にG20が今後一年間保護主義的政策は導入しないと宣言したにもかかわらず、各国は少しずつ保護主義的政策を導入している。

今回紹介するブログ記事は、金融危機発生後の世界各国の貿易政策の変化を観察した上で、保護主義が世界中に徐々に浸透していることを示したものである。
世界金融危機発生後、世界貿易は急激に落ち込んでいるが、そのほとんどは世界経済の冷え込みに伴う総需要の減少を原因としており、各国の保護貿易政策の導入が世界貿易を縮小させているとはいえないが、今後景気の回復が遅れるにつれて、保護主義が蔓延し始めると、貿易がさらに縮小し、そのことによって世界経済の景気回復を遅らせる要因となるかもしれない。

ブログ記事によると、世界金融危機以後、世界各国が導入した貿易条項のうち、貿易を抑制するものは47つに上るという。しかも政策実施国の中にはG20から17カ国が入っているという。(どの国かはちょっと分からないが)

ただし、これらの保護主義的政策は必ずしも輸入関税のような直接的な手段が取られているわけではない。
先進国では、輸入関税や数量規制といった輸入抑制的な政策よりも、補助金の支給や国内産業支援などの政策が実施されている。
たとえば、EUはチーズやバター、粉ミルクに対して輸出補助金を支給することを決めている。また、各国の国内自動車産業の支援も保護主義的な政策として考えられている。

これに対して、先進国ほど財政に余裕のない途上国は輸入関税などの輸入抑制的な貿易政策を用いることが多い。たとえば、ロシアの中古車に対する輸入関税率の上昇やアルゼンチンにおける非関税障壁の強化などがあげられる。

また、アンチダンピング措置の導入も増加している。2004〜2007年までWTO加盟国におけるアンチダンピングの調査件数は減少傾向にあったが、2008年になりこれが急上昇している。アンチダンピング措置というのは、貿易相手国が不当に安い価格で自国に輸出を行っているとして、正当な価格との差額分を関税として課すことを言うが、抜け道的な保護貿易的手段として使われることも多い。

農産物貿易に関する保護貿易的措置も増加している。もともと農産物の保護貿易措置は、農作物の国際価格が低下するほど増加する傾向があるため、今に始まることではないが、しかし、先進国における農作物の保護貿易措置は途上国の経済にとって大きな打撃を与えるものである。

貿易だけではない。金融や雇用の面でも保護主義的措置が実施されている。たとえば、金融安定のための金融機関への支援についても、自国の銀行に手厚く行われ、自国に設立されている外国銀行の子会社には行われていないし、自国民労働者の雇用を増やすために、外国人の雇用を抑制させる政策をとる国も出てきている。

また、以前も述べたバイ・アメリカン条項のようなものも出ており、貿易政策以外での保護主義は着実に浸透している。

このような保護主義的な動きを抑えるためにも、G20が協調してリーダーシップをとって対策を取らねばならないとこのブログ記事は結論付けている。

保護主義というのは、自国民を守るために当然必要だという人はたくさんいるが、それは他国に損害を与えて自分の身を守ろうとしているだけで、他の国が何もしなければ自国民を守れるかもしれないが、他国も同様な政策をとれば結局はお互いに損害を与えあう結果となり、経済をさらに悪化させる結果となるものである。そうならないためにも、自由貿易をお互いに協調して守らなければならないのである。

今日はこの辺で