農産物保護の偏りが自給率の低下の原因???

中国産の餃子事件や最近の穀物価格の高騰を受けて日本の食糧自給率の低さが注目を浴びています。

4月1日号の週刊エコノミストの特集は『日本が飢え死にする』でした。
日本の食料自給率が低いのは良くないという特集だったんですが、農産物市場の保護についてちょっと思いついたことがあったので書いてみたいと思います。

この特集では、EUアメリカの食料自給率が高く輸出までも行っている理由は、輸入関税や輸出補助金によって国内生産者を手厚く保護しているからであり、これに比べて日本の農産物市場は自由化しすぎだと次のように述べています。

日本の農産物の平均関税率は、貿易量を加味しないタリフライン・ベース平均値で11.7%であり、農産物輸出国であるEUの20%、タイの35%。アルゼンチンの33%よりもはるかに低い。さらに、品目数で農産物全体の1割程度を占める最重要品目を除けば、残り9割の農産物の関税率はきわめて低い。野菜の多くは関税がわずか3%と、すでに激しい国際競争にさらされている。関税削減が自給率の低下を招くことは、過去に自由化した麦、大豆、ナチュラルチーズ、牛肉などでの経験からも肯定できるだろう。

確かに、この記事の通り、日本の農産物に対する輸入関税は世界的に見ても低い水準であるが、それは全体としての話であり、本文中にある1割程度の最重要品目では次のようなとてつもない高関税を課しています。

でんぷん 234% 小麦粉 245% 小麦 249% 砂糖 252% バター 325% 落花生 482%
コメ 778% エンドウ豆 1083% こんにゃく芋 1705%

このような高関税は当然国内における農産物価格の上昇につながります。小麦の国内価格は国際価格の1.5〜2倍、米は6倍と言われています。

で、ここからが思いつきなんですが、このように偏った農業保護って自給率低下の原因となっていないでしょうか?

野菜などの作物は非常に低い輸入関税のもとで厳しい国際競争に晒される一方で、米などは高率の輸入関税によって国内価格を高く維持しようとしている。
生産の側から見ると、できれば手厚く保護されている農作物の生産を行おうとするでしょう。その一方で、保護されていない農作物の生産者は厳しい国際競争に晒されて生産を止めざるをえないものも出てくる。そうすると、生産は手厚く保護されている農作物に偏りがちになるはずです。
その一方、保護されている農作物の国内価格は自由化されている農作物に比べて高くなりがちになりますので、消費者は保護されている農作物よりも自由化されている農作物の消費を増やそうとする傾向があると思います。
このように、生産は保護されている農作物に偏る一方で、消費者は自由化されている農作物の消費を増やそうとするわけですから、自給率は下がるようになりますよね。

例えば、日本が一番保護している米を例にとって見ましょう。政府は外国からの輸入を事実上シャットアウトする一方で、米価を調整する事によって国内農家を保護しています。しかし、過重に保護を行うことによって農家が米の生産をどんどん行う一方で、消費者は価格の高い米より相対的に安い小麦や肉などの消費を増加させていくので、米の供給は過剰になり余剰米が発生する事態になるわけです。
本来は供給過剰になると価格が低下して、そうすることによって米の消費量は増えていき米の供給過剰は解消される事になるのですが、そうすると米作農家が苦境に立つために政府は、減反や生産調整をして米価を維持しようとするのですが、そうするとますます米離れは進むことになるわけです。

つまり、一部の農産物だけを保護しようとしても、消費者は相対的に高価になった作物の消費は減らしていくために、その農作物が食事全体に占める割合が減っていく事になるために自給率は低下することとなっていくわけです。

このように、偏った農産物保護は国内自給率を著しく減らす効果があるんですけど、どうなのかなあ。

今日はこの辺で