週刊エコノミスト1月15日号 特集「外国人労働者受け入れと日本経済 労働開国」

少子高齢化が進む日本は、今後労働者不足が問題となってきます。
労働者不足を解決する方法は、次の3つが考えられます。1)高齢者や女性など今まで活用されてこなかった労働の活用、2)機械化(ロボットの活用)やイノベーションによる労働生産性の向上、そして3)外国の労働者の受け入れです。

実際に世界経済を見ると、途上国から先進国へと多くの労働者が移動しています。2005年時点で、世界全体での移民人口は2億人と言われており、世界人口の3.1%が移民になっています。
実際に日本以外の先進国は人口の10%前後を移民が占めており、移民の流入によって労働力を維持しているのが実情です。特に、農業や建設業などは自国の労働者が引き受けようとしない仕事を移民が引き受けており、移民抜きの経済はもはや考えられない状態になっています。
また、単純労働だけでなく、高学歴な労働者や、介護や医療の資格を持つような熟練労働者は、先進国の間で取り合いの状態になっており、途上国の中では優秀な労働者が自国を抜け出すという「頭脳流出」の問題が言われているほどです。

そんな中、日本の人口に占める外国人の比率は、たった1.6%です。

通商白書を見ると、日本政府は有能な外国人労働者を引き入れるべきだと何度も主張している。
しかし、その実態は2003年のデータで見ると、外国人労働者約80万人のうち、高度な技術を持つ専門的・技術的労働者は約19万人ほどで、日系人が約23万人、研修・技能実習生が約9万人となっています(留学生が約10万人、不法滞在者は約22万人)。
日系人の多くは製造業で働いていること、研修・技能研修生も工場で厳しい労働環境で働かされていることを考えると、日本政府は目的としている熟練労働者の受け入れが進まない一方で、日系人や研修生という抜け道から単純労働者を受け入れているという実態が見えてきます。

しかも、建前上は単純労働者は受け入れないという事になっているので、実際に流入してきている外国人に対する政策が整備されておらず、日系人を引き受けて製造業を維持している地域では様々な問題が生じていることがこの特集では指摘されています。
ポイントは3つ。1)外国人労働者住民基本台帳に登録されていないために、その居住を把握することが困難であり、このため徴税もままならず、教育などの住民サービスもおぼつかなくなっている。2)語学力が入国要件でなく、国による教育体制もないために、日本語が満足に話せない外国人と住民との間にトラブルが発生している。3)外国人が健康保険などの社会保障制度の網から漏れてしまう。
これらの問題から生じる社会的コストは外国人を受け入れている地域が実質負担となっている。つまり、国全体としての移民政策の不在が地方に過度な負担をかけているのである。

さらに、日本の移民政策不在は、日本で働く外国人労働者の質を下げることにもつながっている。他の国々が外国人労働者の受け入れを積極的に進めていくと能力のある労働者は移民政策の充実した国へ優先的に移っていくからだ。国際的に人材獲得競争が激化している中、日本は外国人労働者受け入れコストを地域に押し付けるのではなく、国として真剣に取り組まなければならない段階に来ているのだ。

大事なことは、国としての戦略を示すことだ。移民の受け入れといっても、例えば、優秀な労働者を一時的に受け入れることを軸として、しっかりとした選別を行うこともいいだろう。少子高齢化を睨んで、外国人の定住を視野に入れた受け入れ策を考えるのもいいだろう。そのときには、外国人労働者と日本人との統合政策についてしっかり整備しなければならない。また、この特集で提案されているように、アジアを中心とした若者の「人材育成」を日本で行い、ある程度技術がついた後に本国へと帰ってもらうといった「循環的移民」を念頭に置いて制度構築を行っていくのもいいだろう。
いずれにせよ、政府が明確なビジョンを世界に示し、大胆に実行しなければ、このままなし崩しに単純労働者の移民が徐々に増加していき、大きな社会問題になってしまう気がしてならない。

今日はこの辺で