市場統合がアセアン後発国に与える影響

 
今日は、アセアンの市場統合が特にアセアン後発国(ベトナムカンボジアラオスミャンマー)に与える影響について考えて見たい。
 
これも、前回と同じく「日本の東アジア戦略~共同体への期待と不安」の第一章「市場統合と日本の役割−ASEAN後発国の発展を促す」から指摘したい。
 
後発国が市場統合に参加するメリットは次のようなものがあげられる。

  • 後発国が比較優位を持つ未熟練労働者集約的な産業が発展する事によって雇用が増加する。
  • これまで保護されていた産業に対する補助金貧困層への行政サービスに振り分けることができる。

 
これは一般的な自由貿易の利益といっても良いだろう。
しかし、後発国が比較優位を持つ産業といっても、その担い手は先進国や先発国などの外資企業が中心となるため、市場統合によってこれらの国々の企業が後発国に労働集約的な産業を移転するのかどうかを考慮しなければならない。
 
このような企業立地の問題を考えると、次の二つの観点から、これらの企業の後発国への生産拠点の移転が進まないのではないのかという懸念が生じる。
 
まず、一つ目は中国の存在である。
最近賃金が上昇してきているとはいえ、中国にはまだまだ後発国に比べても遜色ない賃金で雇える労働者がたくさんいる。
しかも、交通やエネルギーなどのインフラや市場の大きさを考えると、たとえ賃金が安かったとしても、先進国企業はアセアン後発国よりも中国に労働集約的な生産拠点を移転しようとするだろう。
 
もう一つは産業集積の問題である。
基本的に企業は国や地域間の輸送費がなくなるほど特定の地域に集中する傾向がある。
例えば、日本国内でモノを運送する輸送費は、日本と外国の間で物を運ぶ輸送費よりも安いが、そのような日本国内では、工場はいくつかの地域に集中して立地していることは想像に難くないだろう。
自動車産業だったら、アセンブラーと部品産業がばらばらに立地しているよりも同じ地域に立地する方が効率的だし、国内の交通の便が良くなるほど自動車の工場はたくさん作らずに二つか三つに集約して、その工場から日本全国に自動車を配送しようとするだろう。
このように、産業というのはある特定の地域に集中して立地する傾向があるため、後発国が市場統合に加わったとしても、先発国の企業が後発国に生産拠点を移転するのかどうかは疑問が生じる。
逆に、市場統合に加わることによって、これまで後発国に立地していた企業が、すでに多くの企業が集まっている先発国に移転することだって考えられるのです。
 
結局、市場統合に加わって自国が比較優位を持つ産業を育てようと思っても、外資企業にとって魅力的な投資先でないと市場統合によって却って産業が空洞化することもありえるために、後発国を市場統合に加える際にはインフラの整備など外資企業にとって魅力的な投資先になるような支援が必要であろうことがわかる。
最近はメコン地帯における物流ネットワークの整備など、後発国の経済支援やインフラ整備にもつながるような大規模事業が進んでいますが、これが後発国をすり抜けるバイパスとなってしまうのか、はたまた外資企業の投資を呼び込む切り札となるのか、興味深いところです。
 
今日はこの辺で
 
今日の一枚

Rubber Soul

Rubber Soul

 
The Beatles!僕の最も好きなアーティストです!
Beatlesのアルバムはどれも名盤ですが、僕が最も好きなアルバムは、このアルバムかA Hard Day's Nightですね。
ノルウェーの森」「Girl」「ミッシェル」「In My Life」のようなアコースティック系の名曲もいいですし、
「Drive my car」や「The Word」のようなリフでぐいぐい引っ張るようなかっこいい曲もあったり、
「No Where Man」では相変わらずの見事なハーモニーをかもし出したりということなしのアルバムです。
もしも、Beatlesを聴いて見たいという人がいれば真っ先に薦めたいアルバムです。