ASEAN経済に関して思うこと

eisakukun2007-08-17


僕が大学生だった頃(90年代前半)、開発経済学を専門にしていた先生のゼミに所属したこともあって、NIEsやASEAN諸国の経済発展について勉強しました。
当時のASEANは、外国からの直接投資を積極的に受け入れて、輸出志向型の工業化によって高い成長率を誇っており、経済発展の道を順調に辿っていました。
 
特に、85年のプラザ合意以後の円高の影響を受けて、日本企業がタイやマレーシアなどに電機・機械産業の加工・組立工場を次々と移転させたこともあって、外国企業が経済発展に与える影響、そして、それに伴う日本とアジア諸国の国際分業の変化など、経済発展と貿易に関する色々な書籍を読んで勉強したものです。
 
しかし、97年のアジア通貨危機ASEAN諸国の経済発展に急ブレーキをかける事になります。タイのバーツ急落に端を発したアジア通貨危機金融危機へとつながり、ASEAN諸国に不況をもたらします。
この通貨危機の原因は、長期債券市場や先物為替市場の整備もされないまま国際金融市場の自由化を行ってしまった事によって、大量の外国資本が流入しために経済が過熱し、その過熱した景気が減速したことをきっかけに外国資本が急速に引き上げた事によって起こったものです。
 
このアジア通貨危機によって、たとえ工業化戦略は間違っていなくても、金融市場を整備していないと、大きなリスクを抱えてしまうことを教えられました。
特に、金融のグローバリゼーションが進んでいる現在では、外国の資金を闇雲に受け入れるだけでなく、為替市場や金融市場がリスクを抱えないように経済を運営することは重要なことなのだと思い知らされたわけです。
工業化戦略だけではなく、国際金融・通貨政策についても勉強せなあかんちゅうわけですね。
 
当時は、ASEAN関係の書籍のほとんどが通貨危機関係の本だったと思います。なぜ通貨危機が起こったのか、そして今後こういうことが起こらないためにはどうすればよいのかといった感じのことですね。
 
そして21世紀になり、ASEAN諸国の経済成長率も通貨危機前の水準に戻って来るのですが、新たな問題が発生します、中国の台頭です。
中国はアジア通貨危機を逃れたこともあって、外国資本を次々に取り込んでいき低賃金労働者の強みを活かした輸出志向工業化を遂げていきます。
中国が世界の注目を浴びるようになって、外国資本にとっての投資先としてのASEAN諸国の魅力が下がってしまいます。
 
外国の直接投資を受け入れ、輸出志向工業化の道を歩んでいたASEAN諸国にとってはこれは一大事です。
こういう状況の中、ASEAN諸国のキーワードとなるのはFTA(自由貿易地域)です。
 
外国からの投資を引き入れるためには、その国が魅力のある市場でなければなりません。ASEANの一国一国は、経済規模が小さいですから外国企業にとっては魅力に乏しいです。そのため、ASEAN諸国の経済を統合する事によって、EUのような統一市場を生み出すことができれば、外国資本も積極的にASEANに投資をするようになるだろうと考えられます。
また、これまでの経済発展の中で培われたASEAN域内の生産ネットワークを活用するためにも、ASEAN域内のFTAは効果を発揮するものと思われます。
また、ASEAN域内だけでなく、域外とのFTAの締結も輸出市場の確保という意味では重要です。そして、FTA交渉を考える際も、個別の国々でばらばらに行うよりもASEAN全体で交渉する方が有利な交渉をすることもできるでしょう。
 
今後ASEANの経済発展はどう進んでいくのか、FTAは有効に活用できるのか、中国やインドなどBRICsと言われる巨大な国々が成長する中でおいてきぼりを食らってしまうのか。興味深いところだと思います。
 
今日はこの辺で


今日の一枚:「Cafe Bohemia」佐野元春
 ブログのタイトルをこっちにしようかと迷いましたが、結局「カフェ ブリュ」にしました。
 佐野元春のWeb Pageのタイトルが「Cafe Bohemia」やったしね。
 佐野元春のアルバムでは一番好きなアルバムの一つですね。
 「Wild Hearts」や「Strange Days」なんかがお気に入りですかね。