世界食糧危機は終わったのか??

Voxより

Is the global food crisis over?

07年から08年にかけて穀物価格が急騰したことによって発生した世界食糧危機(Newsweek 2008年5月21日号より『世界食糧危機』)。このブログでも食糧危機についてはずいぶん書いてきたが、世界金融危機が発生してからは穀物価格が下落したことによって、すっかり過去のものになった感があります。

今回紹介するブログ記事は、世界食糧危機後の現状について書かれている。

記事によると、主要穀物価格はピーク時に比べてかなり低下しているが、長期的な平均と比べるとまだ高い水準にあり、特に貧困国では価格はまだまだ高水準にあるらしい。さらに、今回の世界金融危機で、貧困国の所得が減少しているため、貧困国の人々の苦境は増しているそうだ。
また、穀物価格の高騰をもたらした様々な要因(在庫率の減少、バイオ燃料の生産、農作物貿易の規模の小ささ)なども解決していないため、長期的にみると食糧問題はまだ解決していないと言える。

ブログ記事の作者は、今回の穀物価格の高騰に対する穀物生産の増加が先進国に集まっていることにも注目している。たとえばシリアルの生産については、2008年に先進国では12.3%増加しているのに対し、途上国では2.3%しか増加していない。

途上国で農作物の生産が増加していない理由としては、近年の原油価格や商品価格の変動が大きくなってしまっているために、農業開発の長期的なインセンティブが弱くなっているところにある。さらに今回の金融危機で農業開発のための投資に必要な資金の調達が困難になることも長期的な農産物の生産の増加にとって障害となると考えられている。

この記事からわかることは、結局去年あれほど騒がれた世界の穀物問題に関する解決は何もなされていない現状だ。世界経済が不況に入ったことによって問題が先送りになったにすぎない。しかし、世界経済が回復して成長軌道に戻ると、また再び食糧危機が発生するのは確実であり、今のうちにそうならないような穀物価格安定化の政策を世界全体で協調する必要があるだろう。そうすることによってこの2年の経験が生かされることになるのだ。

今日はこの辺で