推薦図書 水野和夫『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』

人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか

人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか

Amazonの商品説明より

1990年代半ば以降、急速に進展したIT(情報技術)革命とグローバリゼーションにより、世界経済システムは大きく変革した。本書は、グローバリゼーションの本質とそれによって起きている構造的変化について解説する。
グローバリゼーションは、これまで「国民国家」単位で成立していた同質性、均質性を破壊する。90年代半ば以降、世界中で格差が広がっているのはその表れだ。1億総中流化によって近代化に成功した日本でも、格差は先鋭的に生じている。16世紀には資本は国家と結びつき、共存共栄してきた。資本が容易に国境を越えるグローバリゼーションの時代には、資本は「帝国」との親密性を高める。著者は、中国、インド、ロシアなどかつての帝国が台頭しているのはその一例だと主張する。

19〜20世紀は実質賃金が上がり続ける「労働者の黄金時代」だった。だが、グローバリゼーションによって「資本の反革命(資本による利潤回復運動)」が起き、先進国の賃金は抑制される。先進国にはディスインフレ、またはデフレが定着。金融政策は緩和基調となり、マネーの膨張で資産価格が上昇しやすくなる。先進国経済は資産価格依存型に陥りやすいと指摘する。

グローバリゼーションの複雑かつ多様な姿を詳細に示している。

(日経ビジネス 2007/04/16 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)

もう3月も終わり、新学期が近付いているが、来学期のゼミのテキストにはこの本を使うことにした。2年前、2007年に大ヒットした本だ。
この本が出版されたころは、まだ世界金融危機が本格化する前なのだが、金融危機直前までの世界の経済状況(アメリカの金融帝国化、日本経済の長期低迷、Bricsの台頭)などについて、歴史的観念、マクロ経済的概念から豊富なデータを用いて解説しており、スケールの大きな経済観が提示されている。

学生には少々とっつきにくいところもあるかもしれないが、現在の世界金融危機の背景、そして今後の世界経済の向かう方向を考えるときに、この本の中に示されているような歴史の進行に伴う経済状況の変化を感じることはとても大事なことだと思う。

がんばってやっていきたいと思っているところです。