地方国立大学は国外企業との連携を探る

日本経済新聞3月16日付13面の記事です。

地方国立大学 産学連携、海外に活路
地方の国立大学が海外企業との産学連携に力を入れている。和歌山大学岩手大学はそれぞれ英国、中国企業に研究成果を移転した。金沢大学は特許料収入のうち海外からの割合が7割に達した。知名度の問題もあり国内の大手企業との連携がなかなか進まず、深刻な景気低迷で地元企業との共同研究も減っている。生き残りを目指し、国境を越えた産学連携を模索し始めた。

(中略)
 
 海外に技術移転の拠点を設けたり、海外大学のTLOや技術移転業者と提携したりする地方大学は増えている。
 国の税金を使った研究成果を海外に移転することに批判はある。ただ、産業界が反対していないことから、文部科学省なども国際的な産学連携を増やすよう後押ししている。

また、同面の記事にこのようなものもあります。

国内、技術移転進まず

 2004年の国立大学法人化を契機に日本の大学は産学連携に力を入れてきた。特許出願件数は2007年度で9,869件、民間企業との共同研究費は310億円を超えた。いずれも5年前の2倍以上だ。しかし、特許料収入が7億7,400万円で06年度比3%減になるなど伸び悩み、技術移転はなかなか狙い通りに進んでいない。
 国内の大手企業は大学からの基礎研究のノウハウを学び、優秀な人材を得たいという意識が強く、技術の自前主義からなかなか脱却できていない。競争的資金を除く国の補助金が減る中、技術移転を進めて収入を得たいとする大学側との隔たりは依然として大きい。大手企業の目は有力大学へ向きがちで、地方大学はより厳しい状況に置かれている。 外部からの資金を増やすため、東京大学東京工業大学といった有力大学は海外の技術移転機関と提携し、特許料収入を増やしつつある。 「海外企業は技術内容で評価する」 (関西TLOの坂井貴行取締役)という。地方大学でも有望な技術はあり、海外活路を求める動きはさらに拡大しそうだ。

大学と企業が共同で研究を行う産学連携ですが、なかなかうまくいっていないようですね。
通常、多国籍企業は国外の大学などの研究機関から技術を吸収するために国外に研究拠点を設けるというのが、過去の実証研究でも示されているのですが、日本では大学の方が国外企業に技術を売り込むわけだからびっくりですね。

結局、2番目の記事に示されているように、日本企業が自前主義(社内の技術リソースを中心に技術を調達し、自らで技術を開発して管理するということです)で、大学を技術を吸収したり人材を引き抜いたりするというスピルオーバーの源泉としか考えていないところにその原因があるようですね。しかも、有力大学に集中するなんてミーハーだなあ、「海外企業は技術内容で評価する」なんて屈辱的な発言ですよ。裏返せば、「日本企業は大学名だけ見て技術内容は見ていない」ってことですからね。

こんなやり方で、日本の技術開発力は大丈夫なんだろうかと不安になります。

今日はこの辺で