保護主義でEUに亀裂が??

EU、国内産業保護で不和:自国重視の仏伊、中・東欧が反発

 EU主要国ではまずフランスが国内産業の保護策に動いた。プジョーシトロエングループ(PSA)やルノーなど自動車三社に総額六十五億ユーロ低利融資を決定。仏国内にある生産拠点の存続を融資条件に定めた。サルコジ大統領はさらに「工場の海外移転を防止し、できれば仏国内に呼び戻したい」と表明した。
 
 これと並んでイタリアは個人に自動車買い替えを促す景気対策の見返りに、自動車業界に国内の生産維持を要求。ベルルスコーニ首相は国内での新製品の開発投資は関連企業との取引継続を訴えた。スペインでも自国の製品やサービスの購入を消費者に促す案が浮かんでいる。
 
 西欧諸国が国内産業の保護に動くのは、市民の間で景気後退に伴う雇用悪化への懸念が強まっているためだ。労働市場の開放に積極的だった英国では外国人労働者の採用をきっかけにエネルギー部門で大規模なストが発生。政府は新規雇用での英国人の優遇に動かざるを得なくなった。
 
 自国の産業保護に傾く西欧諸国には中・東欧が反発を強める。EU議長国でもあるチェコのカロウセク財務相は「経済保護主義のリスクが膨らんでいる」と語り、不満をあらわにした。
 
 EU新規加盟国のチェコスロバキアなどでは自動車や家電などの大手企業の工場進出や投資が成長のけん引役。経済力を示す一人当たり国内総生産(GDP)はEU平均を一〇〇とすると新規加盟国の多くは五〇―七〇にとどまる。景気悪化に投資減少が追い打ちをかける不安がある。
 
 EUの執行機関である欧州委員会は仏伊などの動きについて「(過度の企業支援の規制や公正な市場競争を定めた)EU法令に抵触する可能性がある」(報道官)とけん制。緊急首脳会議の主要議題に「経済保護主義」を加え、加盟国に政策協調を促す構えだ。だが国内の雇用情勢に直結する問題だけに各国の調整が難航する公算が大きい。
 
日本経済新聞 09年2月13日付 7面

アメリカだけでなくヨーロッパでも保護主義が台頭していきます。
 
保護主義は、国内雇用の確保を名目にしているために一見正当化されそうですが、他の国には損失を与える政策であるために「近隣窮乏化政策」とも呼ばれています。
 
不景気になり経済全体のパイが縮小する中での保護主義の応酬は、沈みゆく船の上で、人々が自分だけ助かろうとじたばたすることによって船の沈む速度が速まるようなもので、利己主義的な行動が経済全体のパイをさらに縮小させて、個々の経済をさらに悪化させるという結果につながる可能性があります。

しかも、このような保護主義の応酬は経済規模の大きな国よりも、経済規模が小さくグローバル経済とリンクする中で成長を実現してきた中小国に大きな打撃を与えます。中・東欧諸国がこれに反発するのは当然で、これによるEU内の対立はユーロに対する信認にも影響を与えるかもしれません。

今日始まったG7で改めて保護主義反対を明確化するそうですが、このような情勢の中どこまで信頼される事やら、懸命にならないといけませんね。

今日はこの辺で