WTO(世界貿易機関) 保護貿易防止へ積極的に乗り出す

WTO 保護貿易防止へ新制度 金融危機後 関税・補助金を調査

 金融危機を機に国際社会で関税引き上げなど国内産業保護の動きが広がり始めたことをにらみ、世界貿易機関(WTO)は二月、新たに保護貿易の防止制度を創設する。専門組織をつくり金融危機後の加盟国・地域の保護策を独自に調査。結果を開示して是正を求める。保護貿易主義で貿易が縮小すれば世界景気のさらなる悪化要因となるため、相互監視体制を構築して各政府が安易な保護策に走らないようけん制する。
 保護主義的な措置で被害を受けた国が提訴した場合に限られていた実態調査や是正要求を、自発的に進められるようにする点が新制度の特徴。保護主義的な政策の拡大を未然に防ぐのが狙いだ。

 (中略)

 保護貿易の拡大防止は日米欧、中国など二十カ国・地域(G20)が四月にロンドンで開く緊急首脳会合(金融サミット)の第二回会合でも主要テーマになる。WTOは新制度の詳細や狙いを報告する方針。主要国が調査や是正要求に応じないことで実効性が損なわれることがないよう、G20に協力を求める。
 調査は、WTO事務局内の専門家で構成するタスクフォース(作業部会)が手掛ける。部会のメンバーは既に第一次調査の準備に入っており、二月上旬にはラミー事務局長が特別会合を開いて第一次調査の結果を加盟国・地域に報告する。関係政府から弁明を聞いたうえで、WTOの枠組みで是正の圧力をかける。
 WTO協定が共用範囲と定めている税率の枠内で実効税率を上げたり、ほかの加盟国の産業に損害を与えない範囲で補助金を出したりすることは協定違反ではないが、世界貿易の縮小につながる懸念がある。新制度ではこうした措置も調査対象とする。

(後略)

(日本経済新聞 1月18日 1面より)

前々回でロシアが自動車の輸入関税を引き上げたという記事を書きましたが、そのような保護貿易の動きが見え始めた中でWTOが積極的に動き始めました。
記事内にあるように、本来WTOは加盟国が訴えてこない限り保護貿易主義的な措置の審査はしないのですが、世界的な保護主義の蔓延を防ぐために自発的に保護貿易の芽を摘もうという動きです。
記事内では世界で出始めている国内産業保護の動きとして次のようなものをあげています。

米国 ゼネラル・モーターズクライスラーに緊急融資
フランス 自動車買い替えの購入費を公的補助
英国 ジャガーへの緊急融資を協議
スウェーデン ボルボやサーブに緊急融資や債務保証
ロシア 輸入乗用車の関税を25%から20%に上げ
ドイツ DRAM大手キマンダに金融支援
台湾 DRAM各社に出資含めた支援検討
インド 関税を免除していた鉄鋼製品に課税開始

これを見るとロシアとインド以外の国が行っている政策は、一見保護貿易政策に見えず、急激な景気の悪化に対して国内雇用を下支えする上で必要な政策と見えるものもあると考える人もいると思います。

もちろんWTOがこれらすべての政策が保護貿易措置と認定するとは限りませんが、これらの政策のいくつかが保護貿易措置と認定したときに、認定された国がそれを認めて撤回するのかといえば苦しいですよね。

下手すると、WTOが国内政治に介入するのかという反発が起こる可能性もあるわけで、4月のG20に世界の国々がこのWTOの動きにどのような反応を示すのかは、今後の世界の貿易体制の行く末を左右するとも思います。

今日はこの辺で