保護主義への洗脳は簡単??

Econlogより

Framing Anti-Foreign Bias

2年以上前のブログ記事だが、内容は、人々に自由貿易に関する意識調査を行う時に、事前に自由貿易のメリットもしくはデメリットを説明されると結果はどのように変わるのかというものである。

質問は次のようなものである。

「あなたは他の国との貿易が増加する事に賛成しますか?反対しますか?」

この質問の前に、次の文章を加えるか加えないかで、質問に対する回答が変わるかどうかが本題である。

前置き(1) (貿易肯定意見)
 多くの人は、他の国との貿易の増加は新たな仕事を生み出し、かつより多様な製品をよりやすい価格で消費できるようにするものと信じています。 

前置き(2) (貿易否定意見)
 多くの人は、他の国との貿易の増加は失業を生み、アメリカの企業を外国との不公正な競争に晒すものだと信じています。

前置き(3) (両者並立意見)
 多くの人は、他の国との貿易の増加は新たな仕事を生み出し、かつより多様な製品をよりやすい価格で消費できるようにするものと信じています。しかし、一方で他の国との貿易の増加は失業を生み、アメリカの企業を外国との不公正な競争に晒すものだと信じている人もいます。

これらの前置きがあるとないとでは、人々の意見はどう変わるのか、その意見は次のようなものである。

1)貿易肯定意見の前置きは、人々の考えにほとんど影響を及ぼさない。貿易肯定意見があるとないとで、他の国との貿易増加を支持する人々の割合が増えることはなかった。

2)貿易否定意見や両者並立意見の前置きは、人々の考えに大きな影響を及ぼす。貿易否定意見の前置きがつくことによって、貿易を支持する意見は17%減少し、両者並立意見の前置きは貿易を支持する意見を19%も減少させた。

このことから、民主主義の国において、貿易賛成、貿易否定の論争が繰り広げられると、人々は、保護主義的傾向に傾く事になることが考えられるというのである

確かに心当たりはある。大学で、グロバリゼーションに関する講義を行った時に、グローバリゼーションに対する反対意見を交えながらそれでもグローバリゼーションは我々に利益をもたらすものなのだという趣旨の講義を行っても、学生のレポートを見ると、アンチグローバリゼーションに賛同する内容のものが多く見受けられることがよくあるのだが、そのときにもこういう保護主義に傾きやすい人々の心理的なものが作用していたのかもしれない。

妙に納得できるお話である。自由貿易の利益を人々に伝えていくことはそれだけ大変だということですね。

今日はこの辺で