大恐慌以来の経済危機だからこそ保護主義に警戒を

9月10月と非常勤の集中講義や学会報告などが重なり多忙にしていたが、その間に世界経済は大きく変わってしまった。
アメリカのサブプライムショックから、世界規模の株価下落と1929年の大恐慌以来の経済危機の様相が広がっている。

大恐慌期と違い、世界の主要国家が金融協調等を行うことによって金融危機の悪化は食い止められている状態だが、これから実物経済の低迷が色濃くなっていくことによって不況へと突入していくだろう。各国政府がどんな政策を取ろうとも、それによって一気に景気回復が起こるとはとてもではないが信じられない。

ここで警戒しなければならないのは、実物経済の悪化に伴う、各国での保護貿易主義の高まりだ。

1929年の大恐慌の後、アメリカのフーヴァー大統領は1930年に悪名高いスムート・ホーレイ法を成立させた。これは、農業を中心とした輸入品に歴史的に高水準の輸入関税率を課すものであった(平均輸入関税率は約40%に)。政策の目的は、輸入関税によって国産製品への需要を生み出し、国内産業の保護・雇用の維持を実現することであった。
これに応じて、イギリスやフランスなど欧州の大国は、自らの植民地とあわせてポンド圏、フラン圏といったブロック経済をつくり、保護貿易主義を強めていった。そして、その結果、1929年から33年までの4年間で世界の貿易量は3分の1に激減していくのである。
その結果、各国の経済はさらに悪化し、第2次世界大戦へとつながっていくことになる。

その教訓から、戦後、GATT(現在のWTO(世界貿易機関))体制が築かれ、世界は再び自由貿易の未知へと向かうのだが、今回の世界的な金融・経済危機の行方によっては再び世界に保護貿易の掛け声が起こる可能性がある。

ただでさえ、近年グローバリゼーションに対する批判が高まっており、自由貿易の利益について懸念を表す人々がいたことを考えると、アンチグローバリゼーションの大合唱が起こっても不思議ではない。実際に、テレビのコメンターなどの意見にはそういうものが見られつつある。

また、アメリカの大統領選で民主党オバマ氏が優勢になっているのも気になる。民主党共和党に比べて保護貿易主義が強いからだ。実際に、最近のオバマ氏の演説では、輸入工業製品に対する批判が聞かれる。

しかし、我々は歴史に学ばなければならない。国内産業保護のための保護貿易政策は最終的には成功に終わったことはないのだ。短絡的な手段では真の解決は導かれないのである。

今日はこの辺で