外国人労働者受け入れが自国民の賃金に与える影響

9月1日付日本経済新聞の経済教室で、阪大の大竹先生が外国人労働の受け入れが自国民の賃金に与える影響に関する最新の研究動向についてまとめていた。
以前このブログでも、同様な研究の動向を紹介したが、その延長に当たるものだと思う。*1

記事の中で大竹先生は、外国人労働者流入が自国労働者の賃金に与える影響は、外国人労働者と自国労働者が代替関係にあるのか補完関係にあるのかに依存するとしている。そして、労働者を単純労働と高度労働者に分類した上で、どのタイプの労働者を受け入れる事によって、自国の労働者に対する影響が異なってくることを述べている。その部分を抜粋しておく。

日本人労働者が高度な労働に、外国人労働者が単純労働に従事し、両者の労働が補完的なら、単純労働の外国人の増加は、日本人労働者の賃金を引き上げる事になる。ただし、日本人の単純労働者と外国人単純労働者が代替的なら、日本人の労働者の賃金は下がり、日本人の中での賃金格差も拡大してしまう。
 逆に外国からの高度人材に絞った受け入れは、日本人の高度技術者の賃金を低下させる事になるが、単純労働者の賃金を引き上げ、両者の賃金格差は縮小する。
 
(中略)

 したがって、単純労働と高度労働それぞれにおいて外国人労働者と日本人労働者が代替的で単純労働と高度労働が補完的であれば、単純労働の外国人を入れると、日本人単純労働者の賃金が低下し、高度労働者との賃金格差が拡大する。一方、高度労働の外国人労働者を入れると、高度労働の日本人労働差の賃金が低下し、賃金格差が縮小する。

このように、外国から単純労働を受け入れるのか高度労働者を受け入れるのかによって、その影響は異なってくるところがなんとも面白いところです。
ただし、大竹先生の議論では単純労働と高度労働者は補完的であるのに対して、単純労働と単純労働、高度労働者と高度労働者では代替的であることを前提としているが、以前このブログで紹介したPeri-Sparber(2007)では、米国においては、自国の単純労働と外国の単純労働、自国の高度労働者と外国の高度労働者は比較優位を持つ職種に付き合うという分業をすることによって補完的な関係になりえることが示されている。*2
このため、単純労働もしくは高度労働の受け入れによって、両タイプの労働者の賃金は上昇することになる可能性もあるのである。

実際に、外国人労働者流入が自国労働者の賃金にどのような影響をもたらすのかに関する研究は、記事の中で大竹先生が書かれているようにたくさんあり、まだ確たるものは得られていないが、少子高齢化の中外国人労働の受け入れを考えなければならない日本にとっては大事な研究だと思います。

今日はこの辺で