バイオエタノールについて

最近の食糧価格の高騰の原因の一つに挙げられているバイオエタノール、貴重な食物を燃料に使うなんてけしからんと思う人もいるかもしれないが、本来バイオエタノールはエネルギー問題、環境問題、農業問題を解決するための手段だったのをご存知だろうか?

大きなバイオエタノール生産国の一つにブラジルがあるが、そのブラジルがバイオエタノールの生産に力を入れ始めた理由について、名古屋文理大学の内多先生が「食料政策に波紋を投じたブラジル・米国のエタノール外交」という論文で次のように書かれています。

ブラジルが砂糖きびからのエタノール生産拡大に着手した時期は、1970年代である。この時期は73年の第一次石油ショック原油価格が高騰して、ブラジルの原油輸入額も急上昇した。一方、1960 年代から上昇傾向を維持してきた砂糖価格が74年代に下落した。このような事態に直面したブラジル政府は石油輸入の外貨負担の軽減と、砂糖きびの新たな市場を確保するために、エタノールの生産拡大に乗り出した。砂糖きびを原料とするエタノールは、自動車用ガソリンに混合して消費量を拡大した。砂糖価格は現在も消費の伸び悩みによる供給過剰傾向が解消されていない。

つまり、石油価格高騰に対する代替エネルギーの解決、砂糖価格下落に対する農家の収入確保としてエタノールは作り始められたわけです。アメリカだってトウモロコシを使ったバイオエタノールの生産に力を入れたのは、代替エネルギーの開発による中東の原油への依存の解消、トウモロコシ農家への補助金の拡大が目的だったはずです。

このことから、本来バイオエタノールが開発される事によって、エネルギー価格の抑制と、農作物価格の維持による農家への所得補償が実現するはずだったことがわかります。しかし、現実にはエネルギー価格は高騰し、その煽りで農作物価格も高騰してしまいました。皮肉なもんですよね。

今日はこの辺で