輸出規制政策に端を発したアルゼンチンの混乱 (Newsweek6月25日号より)

以前、穀物輸出国の輸出規制政策に対する批判を書いたが(最近の穀物輸出国における輸出規制政策について)、先週発売のNewsweekで、輸出規制政策を行っているアルゼンチンでの混乱に関する記事があった。

大豆の生産量が世界第3位であるアルゼンチンでは、穀物価格の高騰を受けて今年3月に大豆の輸出税を35%から44%に引き上げたが、輸出で稼ぐチャンスを奪われた農家が猛反発して各地で主要道路を封鎖して食糧をせき止めているという事態が起きている。このため、多くの大豆が倉庫に保管されたままになっているそうだ。

本来、穀物価格の高騰は、農業国であるアルゼンチンにとっては繁栄の機会を与えるものであるはずだ。しかし、政府の輸出自主規制政策によってアルゼンチンは絶好の商機を逃してしまい、国際価格の更なる高騰を招く結果になってしまっている。国際価格が高騰すれば儲かるのは輸出税を上げた政府だけで農民の利益にはなっていないのである。

元々、輸出規制政策というのは国内の貧困層の生活を守るためのものだった。輸出税は国内価格を低下させる効果があるために、低所得者層にとってはありがたい政策の様に見える。しかし、そもそも貧困層の大半が農村地帯に暮らしているために、輸出税によって農家の収入が減ってしまうと貧困の解決にならないのである。

このように、国内への食物確保のための輸出自主規制政策の弊害がわかりやすい形で現われたのは興味深い、私が以前書いた記事のように、政府が国際価格で農家から穀物を買い付けて貧困層に安い価格で提供すればこういう形にはならなかったはずだ。

この調子だと、いずれこの輸出規制政策は解除されるのだろうと思います。

今日はこの辺で