移民がもたらすマクロ経済学的影響

VOXより

Immigrants help improve the output-inflation trade-off
(http://www.voxeu.org/index.php?q=node/866)

以前、都市への移民の流入が先住民の所得や都市人口に与える影響に関する記事を紹介しましたが
(http://d.hatena.ne.jp/eisakukun/20071210)
今回の記事は、移民の流入がその国のマクロ経済指標であるインフレ(物価上昇)や失業率にどのような影響を与えるのかについて書かれています。

マクロ経済学においては、インフレと失業率との関係を示すものとしてフィリップス曲線というものがあります。
一般的に、失業率が低下すると、労働需給が逼迫するために、賃金上昇圧力が発生します。この賃金上昇が価格に転嫁されることによってインフレへとつながっていくというのが、フィリップス曲線の示す失業率とインフレの基本的な考えです。
すなわち、失業率を低下しようとすると労働需給の逼迫からインフレへとつながり、インフレを抑えようとすると、賃金の上昇が抑えられるために失業率が増加ことを示しているのがフィリップス曲線なのです。
インフレを抑えると失業率が上昇し、失業率を低下させるとインフレが進行するというように、どちらか一方を望ましくすると、もう一方が悪くなるという状態をインフレと失業率のトレードオフといいます。

これに対し、今回のブログの記事では現在スペインでは低インフレかつ低失業率というインフレと失業率のトレードオフからはみ出した状態であることを指摘し、その原因に90年代後半以降の移民流入の増加を挙げていました。

スペイン国民と移民の労働者とを比較すると、移民の方がスペイン国民に比べて労使交渉における交渉力が弱くなるなどの理由で低い賃金の仕事でも引き受ける傾向にあるために、労働者を雇う企業の視点から見ると、全体の失業率が低下して労働需給が逼迫しても、移民がいる事によって国内賃金水準の上昇はそれほど大きくならないと予想されます。労働需給が逼迫しても賃金がそれほど上昇しないとなると、企業の生産している製品の価格も引き上げなくても済むようになるわけです。
このため、90年代後半以降のスペインでは低失業率になっても、それが物価に繁栄されず低インフレ状態が実現するということになるわけです。

ここから感想

移民が流入してくると、低賃金でも働いてくれる労働者が増えるわけだから賃金上昇が抑えられ、物価上昇が起こりにくくなるというのは直感的にもわかりやすい話だとは思うのだが、近年は世界全体が低インフレ傾向にあるために、本当に移民の流入がスペインの低インフレ・低失業率の原因になっているのかは少し疑問。
この議論を踏まえると、日本のようにデフレ状態にある経済は移民受け入れは考えないほうが良いという事になる。しかし、本当にそうなのかなあ。
もう少し色々な文献を調べた方が良いような気がします。

今日はこの辺で