企業の海外生産の増加は国内雇用を減少させるのか??

 
VOXより
 
Job-creating offshoring?
(http://www.voxeu.org/index.php?q=node/766)
 
企業の国際化が進む中、多国籍企業の直接投資による国内生産拠点の海外移転が、国内生産および雇用の減少、技術基盤の喪失といったものをもたらすという、いわゆる”空洞化”の議論がよく取りざたされています。
すなわち、企業が自らの利潤だけを考えて、生産拠点を国外に移転することは、国内雇用が外国へと輸出(流出)されることなのだという考えです。
 
今回紹介するBlog記事は、慶應大学の木村先生と安藤先生による日本の空洞化論争に関する分析について述べられています。
 
理論的に考えてみると、多国籍企業が国外に生産活動を移転させることが、必ずその企業の国内雇用を減少させることになるとは限りません。
例えば、賃金の安い途上国に工場を作る事によって、その企業の競争力が向上すると、国内における雇用増加に結びつくことが考えられるし、海外での生産活動と国内の生産活動が補完的であるとき*1には、海外での生産の増加が国内の生産・雇用の増加に結びつくことも考えられるからです。
 
木村先生と安藤先生は、実際に1998年から2003年における日本企業の個別データを用いて、東アジアでの生産を拡大している企業、縮小している企業、東アジアで生産を行っていない企業などに企業を分類して、それらの企業の国内雇用がどのように変化しているのかを調べられていて、東アジアで生産を行う企業ほど国内雇用は増加しているという結果を得たのです。
すなわち、直接投資による国外生産の拡大は、国内雇用を減少させるのではなく増加させており、海外の生産活動と国内の生産活動は補完的と考えることができるのです。
 
 
企業活動の国際化と国内雇用の関係については、アメリカの大統領選でも論争となった問題であり、特に最近は製造業だけでなく、プログラミングや事務業務などホワイトカラーの仕事も国外で行われるようになっているために、先進国の中では企業の国際化の進展によって自分達の雇用が失われてしまうのではないかという強い懸念があります。
その事を衝撃的に伝えた本がフリードマンの「フラット化する世界」だったりするわけです。

フラット化する世界(上)

フラット化する世界(上)

フラット化する世界(下)

フラット化する世界(下)

 
また、ここここでもアメリカにおけるオフショアリング(企業業務の国外移転)が雇用に及ぼす影響について論じられています。
 
いずれにせよ、グローバリゼーションと国内雇用の問題については、これからも多くの研究がなされていくのだと思います。注目していきたい分野です。
 
今日はこの辺で
 
今日の一枚
The Stranger

The Stranger

 
ビリー・ジョエルです。以前、ベスト盤を紹介しましたが、ベスト盤に留まらずビリー・ジョエルの曲はどのアルバムもほんと素晴らしい曲ばっかりです。
その中でも好きなものの一つが、この「ストレンジャー」です。オープニングの「Movin' out」のスリリングなイントロから始まって、ギターのリフがクールな「ストレンジャー」、電子ピアノの柔らかな音とサックスのソロが大人な雰囲気を醸し出している「Just the way you are(素顔のままで)」、ドラマチックな構成になっている「イタリアン・レストランで」、ピアノマンBillyの本領発揮の「Vienna」、ブラスがゴージャスな「Only the good die young」、ロマンチックなバラードである「She's always a woman」、スティービーワンダー張りのサウンドの「get it right the first time」,
そして、ゴスペル調の「Everybody has a dream」と全曲名曲です。
 

 

*1:国内で生産した部品を、海外の生産拠点で組み立てるような場合