自民党と民主党の農業政策を比較してみる

アジアと水産物のことばっかり書いているので、たまには違う話題も

8月25日付の日本経済新聞に、民主党臨時国会に提出する「農政基本法案」の素案が紹介されており、その記事の中で自民党民主党の農業政策の比較が行われていました。

簡単にまとめるとこういう感じです。
 
自民党の農業政策
1)規模拡大で効率化・安定化
  −小規模農家を含めた集落営農など多様な担い手育成に取り組み、食糧の安定供給を図る。
  −農地の保全耕作放棄地の解消に努め、担い手の規模拡大を図る。
2)輸出振興
  −2013年までに農水産物輸出額を1兆円規模に拡大
 
民主党の農業政策
1)所得補償で自給率向上
  −生産費と市場価格の差額を支払う個別所得補償制度を創設
  −休耕田を活用し小麦や大豆などへの転作を促し、食糧自給率を60%に向上
  −財源約1兆円はスーパー林道など農業公共事業削減や転作支援の全額振り替えなどで対応
2)市場自由化
  −自由貿易協定(FTA)締結の促進と、農作物の国内生産の維持、拡大を両立
 
ポイントは、自民党の農業政策が、大規模化促進による生産性上昇を目指すことに力点を置いているのに対し、民主党の農業政策は戸別の農家に補助金を支給する事によって自由貿易協定を進めながら農作物の国内生産を拡大しようというものです。

しかし、この民主党の「戸別所得補償」は評判が悪いですね、ばら撒き政策だと自民党の議員や田原総一郎がテレビで民主党の議員を批判しているところを良く見ます。
だけど、自民党の政策にしたって補助金は出しているんですよね。民主党と違うのは補助金支給の対象を4ヘクタール(北海道では10ヘクタール)以上の農地経営者に限定しているところです(日経の記事より)。大規模農家を優遇する事によって農業の集約化を目指そうとしているわけです。これも悪く言えば大規模土地保有者限定のバラマキになりますよね。
 
僕は世間で言われるほど民主党の案は悪くないと思っています。なぜなら、戸別所得補償の仕方はともかく、民主党の政策というのが自由貿易+生産補助金という政策だからです。
これまでの日本の農業は高率の輸入関税によって保護されてきました。しかし、WTOドーハラウンドFTA交渉など世界的な貿易自由化の中で、いつまでも農業を輸入関税によって保護することはできなくなってきました。それに対してどうするかということが農業政策の重要な課題であり、民主党の政策はそのことを明確に意識していると思います。
  
自民党の政策では、大規模化、輸出振興と勇ましいことを言っていますが、農業の貿易自由化に対してどうするのかという態度が明白ではありません、ごまかしているといっても良い。 
つい先日ASEANと合意したFTAでも農業に関しては輸入自由化の品目から外していました。つまり、自民党の政策は基本的に輸入関税による農業保護が前提となっているのです。
どんなに大規模化で日本の農業の生産性があがったとしても、高関税によって外国からの安い輸入品を拒んでいるのでは消費者にその利益は巡ってきません。
 
国際経済学の観点から見ると、輸入関税政策よりも自由貿易+生産補助金の方が優れているのは明らかですからね。
 
今日はこの辺で
 
今日の一枚

グリーティングス

グリーティングス

先日紹介した「Cappuccino」と一緒に買ったカバーアルバム。「Cappuccino」がジャズだったのに対して、これはボサノバによる洋楽のカバーアルバムです。
結構メジャーどころを押さえているので親しみやすいですよ。