アメリカの金融危機は案外早く解決する?

大和総研 チーフエコノミスト原田泰のフォーカスポイント より

危機はいつまで続くのか ―戦後の金融危機から学ぶ―

(要約)

  • アメリカ発金融危機は、世界金融危機となって日本経済を襲っている。今回の危機は、どれほどの規模で、どのくらい続くのだろうか。もちろん、危機自体は、アメリカやヨーロッパの大胆な政策によって、小康状態を保っている。ここで考察したいのは、危機の影響、特に、実体経済への影響がどれほど続くのかである。このことを考えるために、戦後、これまでに起こった金融危機と、今回の危機を比較してみよう。個々の国々の特徴をできるかぎり残したまま、かつ、簡潔に、何が起きたのかを整理してみたい。過去の経験から、今後どうなるかが学べるだろうからである。
  • スペインと日本を除けば、危機の後の回復は順調だったと言っても良いだろう。北欧3 ヶ国の危機においては大きな落ち込みと急速な回復、その他13 の危機においては軽い不況を経験しただけでほとんど何もなかったかのような回復という特徴が明らかになっている。アメリカの回復は北欧3 ヶ国とそれ以外の13 の危機の間になるのではないだろうか。
  • 今回のアメリカ発世界金融危機を契機として、アメリカが、日本のような失われた十年になるのではないかという議論があるが、そうはならないだろう。その理由は、第1 に、世界の多くの金融危機のうち、失われた十年になったのは日本だけだからである。第2 に、日本の場合は金融緩和が遅れたことがその後の回復を妨げたが、アメリカは早期に大胆な金融緩和をしているからである。第3 に、北欧の場合には資本流出によって金融緩和をすることが困難になったが、アメリカはそのような状況にないからである。

今回のアメリカの金融危機に端を発した世界経済危機がいつまで続くのか?

それに関する一つのアプローチが、過去の金融危機と比較することだ。このレポートでは、戦後世界で起こった金融危機がどのような経路で回復したのかを示しながら、その問題を論じている。
こうしてみると、日本を含め世界の主要な地域で金融危機が起こっていたんだなあと実感します。
我々は、日本のバブル崩壊後の失われた10年(20年?)を経験しているのでついつい悲観的になりますが、過去の金融危機多くは意外に短期間で回復を経験しています。
そう考えると、アメリカの金融危機も2〜3年で回復するかもという気もしますが、簡単には言えない部分もあると思います。

まず一つは、アメリカの金融危機は世界全体の経済危機につながっていることです。過去の金融危機は、当事国では深刻な落ち込みを経験してもそれが世界全体に波及することはありませんでした。このため、金融セクターの処理が進めば、成長する世界経済の軌道についていくことで急回復することができました。しかし、今回はアメリカに連鎖して世界中が不況を経験しているわけだから、アメリカが経済回復軌道に乗ろうとしても世界経済が今度はアメリカの景気回復の足を引っ張ることになりかねないということです。
そしてもう一つは、今回のアメリカの金融危機は、アメリカの過剰消費によって引っ張られてきた世界経済の成長モデルの崩壊を意味しているために、新しい世界経済の成長モデルが見つからない限り、これまでのような力強い世界経済の成長は見込めないということです。

なので、あまり楽観できないなあというのが正直な気持ちです。これからどうなっていくんでしょうか。。。。