穀物価格はなぜ高騰してから下落するのか

Economist's Viewより

Commodity Price Movements in the Short-Run and Long-Run

一時の急激な高騰からようやく落ちついてきた穀物価格。
歴史的に見ても、現在の穀物価格の高騰は激しいものだが、過去にも穀物価格は何度も高騰した後、価格が急落して長期的トレンドへと戻っている。
もともと、穀物というのはある年に不作となって価格が上昇しても、次の年に豊作になれば価格は急落するわけで、供給の不安定からある程度価格の動きは激しくなるものだ。
ただ、今回の穀物価格上昇はBRICsなどの新興国の成長やバイオエタノールの生産拡大による穀物需要の増大が大きな理由と言われており、長期的に見ても穀物価格は上昇トレンドにあると見られている。

今回紹介するブログ記事は、今回の穀物価格や原油価格・資源価格などの高騰とその後の価格下落の動きを、市場における需要の拡大に対する長期と短期の調整過程を原因として説明している。

使っている理論的手法が経済学の初歩的な枠組みで説明できるところが面白い。

上図はブログ記事から直接抜粋したものだ。2つある図の上の図のDは需要曲線、SRSは短期の供給曲線、LRSは長期の供給曲線を示している。長期と短期の供給曲線とは、消費者の穀物に対する需要は時間をかけずに変動するのに対して、供給は価格が上昇しても短期間では増加させることはできないことから、短期の供給曲線の傾きは大きくなる(価格に対する弾力性が小さい)のに対し、ある程度時間を経過した長期になると作付面積の拡大などから価格上昇に対応した供給の増加が可能となるために、長期の供給曲線は短期のそれに比べて傾きは緩やかに(価格に対する弾力性が大きく)なる。

このことを踏まえて、新興国の成長やバイオエタノールの生産の拡大によって、穀物に対する需要曲線が上図のDからD1へとシフトすると考えよう。短期における供給曲線はSRSとなるために、均衡点はaからbへと移り価格は上昇する。しかし、その後穀物の作付面積の拡大などによって穀物の供給側が生産を拡大させると供給曲線は長期のLRSとなるために、均衡点はcへと移り、価格は下落することになる。

このような調整過程における価格の変化を示したものが下図になる。横軸が時間、縦軸が価格を示している。T1期に需要曲線がDからD1にシフトする時、短期の供給曲線に沿ってT2期まで価格は上昇する。その後、供給曲線が短期のものから長期のものへとシフトする事によって価格は下落していき、T3期に価格は長期の均衡価格へと収束する事になる。

今回の穀物価格の高騰からの下落が、この短期と長期の調整によって発生したかどうかは検討の余地はあるだろうが、生産の調整に時間のかかる穀物ではファンダメンタルの変化による価格の変動というのは、一直線に新しい均衡価格へと向かうのではなく、いったん過剰に反応した後に新しい均衡価格に落ち着くということを知っておくことは必要なことだと思える。

こういう話は穀物価格に限らず為替レートや資産価格の変動などにも当てはまるもので、なかなか直感では思いつかないことだが、それゆえに面白い話だと思う。

今日はこの辺で