穀物価格を巡る問題を徒然に

原油価格も落ち着きを見せ初めて、いわゆる資源バブル、商品バブルというパニックは一時的に回避されそうだ。

とは言え、以前の水準まで穀物価格が戻ることもなさそうで、今後穀物の安定供給をどのように実現していくのかについては、これからも議論が深まっていくだろう。

その中で、今回の穀物バブルは、色々興味深い側面を明らかにしたと思う。思いついたことを徒然に書いていこうと思う

まず一つは、新興国を中心にこれから世界経済が持続的に成長するためには、世界全体の穀物生産を増加させていかなければならないことがはっきりしたことだ。新興国が成長する限り、穀物需要は増え続けるわけであり、長期的視点を持った技術革新、品種開発が急遽求められる事になる。これは、アグリビジネスから考えると多様なビジネスチャンスが与えられることを意味するわけで、農業に成長のフロンティアがもたらされたことを意味する。

次に、今回の穀物バブルにはファンドマネーが一役買っているということだ。これには異論もあるが、グローバルマネーが世界中を飛び回る時代にこのような金融的要因によって穀物価格が乱高下するようになったとしたら、穀物を買い取る企業、穀物を輸入に依存する国が、これら穀物価格の変動リスクに対してどのように対処するのかを真剣に考えなければならないだろう。ファンド資金の穀物市場への流入を規制することによって穀物価格の変動を抑えようという考え方もあるが、為替レートだってあれだけ不規則な変化をしながらも企業は為替リスクに対する対応を進歩させている。穀物価格が急変動したとしても、穀物の調達方式を工夫する事によって、価格変動リスクを和らげる方法はあるのではないだろうか。

次に、今回の食糧危機をきっかけに各国が食糧安全保障に熱心となることが考えられる。これは一見よさそうに見えて実は危険だ。そもそも、今回の食糧危機の一因は先進国が自国の食糧安全保障を理由に国内農業を保護した事によって、途上国の農業が停滞した事にある。さらに、穀物輸出国の輸出規制策は今回の穀物価格バブルの一因にもなっており、各国が食糧安全保障に熱心になるほど、国際穀物価格は不安定になってしまうのだ。
世界全体で農業を効率よく生産するためには、農業に適した国が農業を輸出することが望ましく、その障壁となる保護貿易は、長期的な穀物価格の安定には必ず必要だと思う。

最後に、バイオエタノールだ。これも今回の食糧危機ではじめて出てきた問題だ。
以前書いたように、本来バイオエタノールの生産は、石油に代わる代替エネルギーの供給によるエネルギー価格の安定化と、農作物価格の下落を抑えることによる農家の所得向上を目的とされたものだ。しかし、今回はバイオエタノール穀物価格の上昇が原因となってしまった。しかし、これは昨日書いたように、アメリカの非効率なバイオエタノール生産の拡大にその原因があるのではないかと思われる。これもエネルギーの安全保障のために、価格競争力のあるブラジルからのバイオエタノールの輸入を制限しているところにその原因があり、安全保障がいかに弊害をもたらすかの例となるのではないだろうか。

いずれにせよ、食糧安全保障、エネルギー食糧保障に伴う保護政策の弊害はもっと指摘されてもいいと思う。そういう議論ってないのかなあ。。。

今日はこの辺で