亀山モデルかAppleモデルか (日経9月3日5面より)

 
今日の日経のコラムで、亀山に代表されるシャープの事業モデルとi-PodにおけるAppleの事業モデルの対比が書かれていました。
 
その中で、シャープの基本戦略は「徹底的な自前主義」であり、製造技術の外部への情報漏洩を完全に遮断する「ブラックボックス化」を徹底的に進める一方で、カラーフィルターや偏光板などの主要な部品・部材は近接地に立地する企業を中心に調達するという、液晶関連の国産メーカーによる産業集積の長所を100%活かした垂直体制であると述べられていました。
 
これに対して、Appleによるi-Pod,i-Phone事業モデルは、Appleは製品にコンセプトや設計、そしてマーケティングに力を入れており、製造は電子機器の受託製造業であるEMS(Electronics Manufacturing Service)に100%任せ、部品もほとんど外部からの購入でまかなっています。製造のコストダウンは委託先に任せ、製品企画とマーケティングに力を入れるのがAppleの基本戦略です。
 
日本の製造業から見れば、製造部門を完全に外部に委託するなんてどこで儲けるんだと思われるかもしれないAppleの戦略ですが、このコラムではi-Podの使用部品から製品組立、販売に至るルートに関する企業・国を割り出した上でi-Podに関する付加価値が一体どこに帰属するのかを分析した研究結果を紹介しています。
 
その研究によると30GB、定価299ドルのi-Podについて、日本メーカーの付加価値ベースの貢献は26ドル、部品供給企業および組立企業(主に米国外に立地)の付加価値ベースの製造コストは144ドルであり、定価との差額155ドルがAppleと流通業者の懐に入ることになるわけです。定価の半分以上がAppleの利益となるわけですから十分儲かっているわけですよね。
 
このi-Podやi-Phoneのように、企画・設計やマーケティングだけに力を入れ製造工程のすべてを外注するような手法を用いる企業のことをファブレスメーカーと言います。コラムによると、北米薄型テレビ市場ではわずか100人弱のファブレスメーカー、ビジオが今年の第2四半期にシェア12%でトップに躍り出たそうです。
また、電子機器の受託製造を行うEMSについては台湾の鴻海精密工業は売上高5兆円という巨大企業になっています。
 
つまり、シャープのような「自前主義」というのは、もはや事業モデルの選択肢に過ぎず、唯一無二のモデルではないと言うことなのです。
 
このコラムでは最後にこう書かれています。
「ノウハウで固めた垂直一貫体制も強調しすぎると、i-Podやi-Phoneを発想できなかった負け惜しみの国内籠城のように見える」
 
もちろん、これはシャープの事業モデルを批判しているわけではありません。シャープのように長い間の経験によって技術を蓄積した企業が自前の特殊技術の強みをとことん活かそうということにはそれなりに合理性はあるのです。
しかし、昔のように製造技術は先進国の一部の製造メーカーが握っているという時代ではないのです。
工業品の高度化・多様化に伴い、必要とされる部品や技術も多種多様になる一方、グローバリゼーションが進む事によって優秀な部品メーカーや技術を持つ企業も先進国から途上国まで世界中に散らばるようになって来ました。
このような時代では、すべて自前でやらなくても、世界中の優秀な技術や部品をかき集めてグローバリゼーションの恩恵をうまく取り込む事によって、既存の大企業に負けないような製品を作ることも可能なのです。
日本の製造企業がシャープのような「自前主義」にこだわる限り、新しい成長企業が日本から出てくることはないでしょう。後発企業がシャープのようなやり方をしても、これまでの経験が蓄積された先行企業の競争優位を覆すことはできないからです。
特に、今後技術革新が次々と急速に行われるようになるでしょうから、そういうときには必要な技術を世界中から適切に調達できる企業が続々世界の大企業に成長していくような気がします。その中に日本企業は現われるんでしょうか。。。。。
 
今日の一枚 

カメラ・トーク

カメラ・トーク

 
Flipper's Guiterは僕の最も好きなアーティストの一組です。小山田圭吾小沢健二という渋谷系を築いた両巨頭が組んでいた伝説のグループです。
1曲目の「恋とマシンガン」はドラマの主題歌にもなって、レコード大賞の新人賞もとったはずです。
「恋とマシンガンは」最近車のCMでも使われたので、聞いたことあるって言う人も多いはず。
僕の好きな曲は、「バスルームで髪を切る100の方法」「偶然のナイフ・エッジ・カレス 」「午前3時のオプ 」あたりですね。
サリンジャーを思わせる歌詞に、洋楽のおいしいところをうまく詰め込んだサウンド、僕のバイブルです。