開発援助の経済効果をめぐる諸論点

開発援助の経済効果をめぐる諸論点 植田大祐

(要旨)
1. これまで、多くのドナーにより、開発途上国に対して莫大な額の開発援助が供与されてきた。しかし、アフリカ大陸を始めとする開発途上国の状況は、十分に改善されてきたとは言えない。こうした状況を背景として、ミレニアム開発目標の設定などにより、ドナー側に対する開発途上国への支援強化の要請は強まっている。このような要請に応えるには、開発援助の量・質の改善が必要であろう。特に、厳しい財政事情により、大幅な開発援助予算の増額を望めない日本にとっては、開発援助の質の改善がより一層重要となる。
 
2. 開発援助の主要な役割を、被援助国における投資と貯蓄のギャップ及び外貨準備制約(国際収支ギャップ)の補填とする考えが、世界銀行などを中心に広く浸透している。このような考えは、ツー・ギャップ・モデルと呼ばれている。しかし、ツー・ギャップ・モデルの現実への妥当性は極めて低く、現在でもこのモデルが使用され続けている状況に対して、批判も寄せられている。
 
3. 実証的な研究の結果によれば、被援助国の成長促進という観点からは、開発援助が期待されたほどに効果を上げていない可能性が高い。また、世界銀行などによって主張された、的確な政策運営が実施されている被援助国においては開発援助の成長促進効果が発現するという理論も、実際のデータを用いた複数の分析によれば、必ずしも支持されているとは言えない。
 
4. 開発援助が期待されたほどに効果を上げていない要因として、援助の氾濫援助のファンジビリティ(代替可能性)の存在が指摘されている。

5. 援助の氾濫とは、被援助国政府の管理能力を超える数の援助プロジェクトが乱立する状態を指す。援助の氾濫が発生すると、被援助国において、開発援助の受け入れに関する業務の非効率化、援助プロジェクトの維持管理に必要な経常費用の不足等の問題が発生する。
 
6. 援助のファンジビリティとは、被援助国に開発援助が流入することで、開発援助の目的とは異なる公共支出が増加することを指す。援助のファンジビリティにより被援助国の歳出構造が変化すると、ドナーの意図した開発援助の効果が十分に発揮されない可能性が高い。
 
7. 援助の氾濫や援助のファンジビリティといった現象への対応策として、ドナー間における援助に関する手続き・行政的枠組みの調和化、被援助国のオーナーシップの尊重等を重視する援助協調が始まっている。
 
8. 援助協調には、従来の日本の援助手法とは異なる特徴が多く、それらの特徴と援助協調を常に両立させることは困難である。今後、日本がどのような形で援助協調に参加できるのか、幅広く選択肢を検討していく必要があろう。

開発援助を途上国の経済成長にどのようにして結び付けるのかという研究に関するサーベイ論文。

戦後、多くの資金が途上国に開発援助の形で流入したにもかかわらず、いまだに貧困にあえぐ途上国が数多く存在することから、開発援助の経済効果には大きな疑問が投げかけられている。

その原因としては、援助プロジェクトの数が被援助国の受け入れ能力に対して多すぎるという「援助の氾濫」と、開発援助の流入が単なる受け入れ国の予算増加となってしまう「援助のファンジビリティ」があげられている。

その対策として、単に資金を提供するだけでなく、受け入れ国の自助努力を促し、援助に参加する経済主体間の行動の調整を行う援助協調を行う必要性が挙げられている。

簡単に流れをとらえるとこのようになるわけだが、大事なことは資金をただ与えるというだけでなく、その資金を有効に使えるような援助国の意識改革や援助組織の構築が必要だということですね。

これを国と地方に当てはめれば、国が金をばらまけば経済は回復するなんていうのがいかにいい加減かもわかりそうなもんですね。

今日はこの辺で