「平成の農業改革」を実現できるか

NRI(野村総合研究所) Public Management Reviewより

「平成の農業改革」は事業機会をもたらすか

食料自給率向上を目的に、日本の農業をどうするのかという議論が続いてますが、今回紹介するレポートは農業経営の大規模化と効率化を目的とした農地改革農業生産法人への企業参入の企業参入の障壁撤廃によって農業の大規模化や異業種企業の参入などを活発化させることができるのではないかという趣旨のものです。

レポートの流れは次の通り。

・異業種からの農業への参入が現在進められているが、現時点でそれらの企業の生産する耕地面積は日本の総耕地面積の0.02%しかなく異業種の農業への参入はいまだ本格化していない。

・その原因の大きなものは2つある。一つは、農地の定期借地権の上限は20年と非農地のそれ(50年)に比べると非常に短く、長期的視点からみた農業の効率化への挑戦を妨げていること。もう一つは、企業等による農業生産法人の出資条件が1社で10%以内、複数者でも25%以内であるため、異業種の企業が経営の主導権をとることができないことである。

・そのため、現在検討されている農業改革では農地利用権の要件緩和と農業生産法人への出資要件の緩和が議題となっている。これが実現すると、流通事業者や食品事業者などの異業種にとって農業市場が未開拓の魅力的な市場となり様々な事業機会が発生する可能性がある。

・具体的な事業機会としては、「農地利用権が流動化する事によって農地利用権市場が発生する」「農業の大規模化に伴い農地インフラの改良の必要性が発生する」「異業種の農業生産法人への出資が増える事によって民間企業のノウハウが農業に移転される」ことがあげられている。

・このような事業機会を自社の発展につなげるためには、「プロ農家の囲い込みによる調達体制強化」「地方自治体との戦略的連携の強化」や「農家や農地の評価スキームの構築」といったアクションを今のうちにとっておく事が必要となる。

これらの農業改革は、これまでの農業とは農地を持つ自作農が行うものという基本原則を崩して、農地をいかに有効に活用するのかという視点から行われている。
このレポートの予想するような変化が起こるかどうかは検討の余地があるかもしれないが、戦後弱ってきた農業を再び活性化するためには、これくらいの方針転換を必要とするのではないかと思う。改革をする事によって事業機会が生まれ、それを企業がうまく活用する事によって産業全体の発展につながるといいのだが。。。