News Week 12月10日号 「貿易障壁というまぼろし」

最近の金融危機の打開策としてG20サミットで、現在行われているWTOドーハラウンド(多角的貿易自由化交渉)の合意に対する期待が述べられた事に対する記事である。

内容は、「財貿易の自由化はすでに十分進んでおり、これ以上自由化してもそれほど大きな効果はない、それよりは国際労働移動の障壁を引き下げ、先進国が途上国の労働者を受け入れる体制を作ることのほうが有効だ」というものです。

正直、ニュースウィークにしては雑な記事だなって思いました。

記事では、クルーグマンのコメントを引用しながら、今日の工業製品にかかる輸入関税は先進国で約5%、途上国で10〜20%であり、ここから関税を半減させても効果は余り期待できないとしているが、先進国の場合、平均の輸入関税は低いが、農産業や繊維産業など比較劣位を持つ(途上国が比較優位を持つ)産業など一部の保護産業の関税は十分高い。また、記事にも書かれていたが、先進国の保護政策は関税から、数量規制や国内補助金、アンチダンピング関税やセーフガードなどの非関税障壁へと移っているために、平均輸入関税だけで自由貿易は十分進んでいると語るのは稚拙といっていいだろう。

ただし、国際労働移動の自由化を進めるべきだという意見には賛成だ。記事の言うとおり、グローバリゼーションが最も進んでいないのがこの分野であるからだ。しかし、貿易自由化よりもこっちの方が心理的抵抗は大きくないろうか???

ドーハラウンドでの貿易自由化や労働移動の自由化がもたらす経済的利益については、スティグリッツの「フェアトレード」に詳しく書かれています。

フェアトレード―格差を生まない経済システム

フェアトレード―格差を生まない経済システム

この本は途上国の利益を最優先に考えられており、先進国にとっての利益についてはほとんど描かれていないが、これからの世界の経済成長を考えると、まず途上国を成長させ、それに乗っかる形で先進国の成長を考えることが一番だと思うので、ドーハラウンド(元々開発ラウンドと呼ばれている)は、途上国の経済成長の機会を作りだす事に重点を置くべきだろう。

今日はこの辺で