産業の新陳代謝と金融業界

Voxより

Better finance for more enterprise growth in Europe

新しい技術やビジネスモデルを導入して急成長する新興企業の参入と、それに伴う古い企業の退出を通じた業界内での新陳代謝というものは経済成長を実現する上で重要な条件の一つとなっています。

このため、経済成長の研究分野では各業界における企業の参入と退出がどれくらい頻繁に行われているのかという研究がなされています。

今回のブログ記事はその研究と関連して、欧州と米国を比較したときに欧州の方が米国に比べて業界内における新陳代謝が欠けているのではないかというものです。
その理由は非常に簡単なもので、Financial Times誌がリストアップした500社の大企業のうち、20世紀後半に起業した企業の数を調べるとアメリカの企業は51社あったのに対し、ヨーロッパの企業は12社しかなく、ヨーロッパの大企業の多くは19世紀後半に設立された企業が多かったということです。
歴史のある古い企業が今でも大企業であり続ける一方で新興企業の成長には欠けているというヨーロッパにおける新陳代謝の欠如が浮かび上がります。

その原因として、ブログ記事では金融業界の体質の違いを挙げています。欧州の金融業界は大企業には手厚いサービスを提供しているのに対し、担保の少ない新興企業には厳しい一方で、米国の金融業界はキャッシュフローがまだ乏しい新興企業への貸出をどんどん増加させているそうです。これは米国の金融業界は金融リスク管理の手法をどんどん開発していることが原因だとブログ記事の筆者は考えているようです。

このブログ記事では米国と欧州を比較していますが、日本も欧州と同じく新興企業への資金供給は手厚いとは言えませんよね。だから産業内での新陳代謝がないわけで、経済成長なんて望めないわけですよね。

去年発売された野口悠紀雄の「資本開国論」でも、アメリカではグーグルやシスコシステムズなどの新興企業がどんどん出現して、GMやGEなどの伝統的な企業を追い抜いていき産業の主導権の交代がされているのに、日本ではいまだにトヨタやキャノンといった製造業の古い大企業に依存してそれを追い越すような新興企業が出現していないことがアメリカと日本の差になっているとの指摘がなされていますが、それと同じような話なのではないかと思います。

一国の経済も新陳代謝して新しい成長戦略を作っていかなければ、世界からどんどん取り残されていくだけだと思います。

今日はこの辺で